第25話 コーヒーと猫とマットとジェフ
24年1月16日より、Ver.1を削除してVer.2への更新を行っております。
2月9日に発売される書籍版第01巻の続きはVer.2準拠で更新していきます。
書籍には書き下ろしが沢山載っておりますので、どうかよろしくお願い致します。
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パワードスーツを着込んでダンジョンを散歩した翌日、俺達は自衛隊からの
自衛隊を監視していてくれた姫の情報によると、自衛隊が
危険人物として俺達の身柄を確保しろという意見もあったらしいが、姫が作ってくれた虚構のバックアップ組織とストーリーのおかげで任意聴取という形に収まっていた。
そういう形で収まってくれたのは姫に対する感謝の念が絶えないぐらいにありがたかったし、自衛隊の方の理性にも大きな感謝を送りたいところではある。
あるのだが……。
「あなた達の使っている特殊な技術がどうだとか、罪に問うとか問わんとか、そういう話じゃない! ただ一つ、ただ一つだけ聞きたいだけなんだ!
それでもこうして立派な応接室で机を挟んで強面の偉い人に大声で詰められてると、普通の学生である俺にはちょっとしんどいところもある。
だが、俺と違って普通じゃない宇宙猫のマーズはそんな事には全く動じず、のらりくらりと追求をかわし続けていた。
「いるかいないかって、ねぇ。そういう事は我々よりもそちらの方がよくご存知だと思いますが」
俺は事前に言われた通りに何も語らず、泰然とした態度を崩さない事に全力を傾けている。
「そういうのはもう沢山だ! 簡潔に言ってくれ! いるのならばだ! 東京の首都機能は捨てなきゃならん! いなくたって警戒は解けないが、今なら混乱は最小限に抑えられる!」
「まあまあ、そう熱くならないで」
ヒートアップするお偉いさんを、その隣に座っていた優男っぽい眼鏡の人がなだめる。
「竹原さんちょっと落ち着いてください。すいません、ここからは私、内木が」
ああ、なんかこういうの漫画で読んだことあるぞ。
強面の人と優しい人をセットにしとくと
「正直言って、我々にはかなりの部分で確信があるんです。放射線測定の結果を見ても、
え!? あの竜、放射能あったの!?
思わずマーズの方をちらっと見るが、彼はこちらへ視線も向けずに爪で俺の太ももを
痛いよ……。
「我々はそちらのお国元であるポピニャニアと事を構えるつもりは全くありません。これまで強固に隠蔽されていた会社情報や経歴などが急に公開された事も、詮索するつもりはございません。ただ、ただですね、あの
眼鏡の内木さんがそう言うが、マーズはまだのらりくらりモードだ。
「そう言われましても、本当にこれまで何度もお答えしてきた通りなんですよ」
「マーズさん、我々はそういう事を聞きたいんじゃないんですよ。今東京には、二千万人以上の住民がいます。私事ですが、うちの実家も、そっちの竹原さんが人生を賭けて建てた新築の家もある。膨大な人達の生活が、あなた達の答えにかかってるんです!」
「よけいな事は言わんでいい!」
マーズはだんだん圧を増す二人にも動じた様子なく、困ったような様子で爪で顎をかいた。
「本当に以前お伝えした事が全てなのですが。しかしどうも、それでは納得して頂けなさそうですね……ですので、一言だけ」
彼が静かにそう言うと、前の二人が心持ちこちらへ身を乗り出した気がした。
「私と
内木さんは一瞬視線を机に向け、スッと椅子から立ち上がった。
「結構です。竹原さん、いいですか?」
「構わん! すぐに出るぞ!」
そう言うと、竹原さんはこちらに視線を向けることもせず、すぐに部屋から出ていった。
「川島さん、マーズさん、本日は本当にご協力をありがとうございました。申し訳ありませんが我々はこれにて。お忙しいところ申し訳ありませんが、佐原さんもお話を伺いたいそうですので……」
「あ、はい……」
内木さんも竹原さんに続いて部屋から出ていき、それと入れ替わるように壁際に立っていたグレーのスーツの男がソファに座った。
「私、防衛装備庁の佐原と申します。お疲れの所申し訳ありませんが、もう少しだけお話よろしいでしょうか? おい、コーヒーもう一杯」
佐原さんがそう言うと隣室からすぐにコーヒーが運ばれてきて、俺達の前の冷めたコーヒーと交換された。
「川島社長の纏っていらっしゃったパワードスーツ、風の噂で素晴らしい性能だとお聞きしました。ぜひお話を伺いたいですなぁ」
「もちろんですとも。社長、お名刺を」
マーズが俺の腕をポンポン叩くので、ソファに置いていたバックパックから俺とマーズの名刺を一枚ずつ取り出した。
「私、川島総合通商の専務取締役を務めておりますマーズと申します」
「社長の川島です」
自衛隊にとっては違うのだろうが、俺達にとってはドラゴン討伐の事実確認なんてのは前哨戦にすぎなかった。
本番は、ヤバすぎる
そしてこれは同時に、会社としての実績を作るための格好の機会でもあった。
運ばれてきた新しいコーヒーの香りと共に、さっきの二人とは桁違いに厄介そうな佐原さんとの話し合いが始まったのだった。
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