第4話 親衛隊とか

 駅に到着すると、学生服の女性たちが待っていた。


「「「おはよう、直人くん」」」

「おはよう、皆」


 今日は10人か。クラスメートや先輩、後輩の女子たちが待ち構えていた。長身で活発そうな運動部系女子から、落ち着きある清楚系な女子、メガネをかけた真面目な委員長系女子など、色とりどりの女子たちから挨拶される。


 待ち合わせを約束していたわけじゃないけれど、時間を合わせて彼女たちは僕と一緒に通学するために駅前で待っていたのだろう。


 この近くに住んでいる人が多いけれど、あの中には電車に乗ってわざわざ来る人が居るのを僕は知っている。朝なのに大変だ。だけど、そうするぐらい慕われていると思うと嬉しい。


「それじゃあ、行こっか」

「「「うん」」」


 二人から、一気に人数が増えて集団になった僕たちは駅の中に入っていく。僕は、周りを女子たちに取り囲まれながら歩く。一人の男に付き従う一群。親衛隊のような感じだ。その中心にいる僕はまるで、騎士に守られる王子様のようだった。


 こうやって慕ってくれる女性が多いと、本当に気分が良いよね。前の世界だったらありえないような、ハーレム状態だよ。


 こうなったのも、僕が今まで色々な女子たちと親密に交流してきたからだ。そして、これからも数多くの女子たちとの交流を続けていく。同年代の学生だけでなく、大人の女性とも。もっともっと多くの女性たちと楽しみたい。




 特別なカードを挿入して、改札を通る。男性だけに支給されている特殊なカード。これを使えば、電車賃が無料になる。これの他にも、色々な施設や機関でサービスが無料で利用できる。本当に、この世界の男性は優遇されすぎていた。生きて行くのがイージーすぎる。それぐらい、男性という存在が貴重だということなんだろう。


 他の皆は、定期券で改札を通っていく。そして、僕と一緒にホームへと向かった。


「今朝は、部活は休みだったの?」

「あ、うん。テスト前だから、練習も休みになったんだ」

「そうなんだ。休んじゃうと、せっかく鍛えた体が鈍っちゃわないかな?」


 そう言って、僕は会話している女子の腕をペタペタと無遠慮に触る。鍛えられた、筋肉のついた立派な腕。こちらの世界の女性は、鍛えると筋肉がつく。逆に、男性は筋肉がつきにくいようだ。個人差があるけれど、僕もあまり筋肉はないほうだった。ちゃんと頑張って鍛えているのに、羨ましいな。


「う、うん。テスト期間でも、ちゃんと個別でトレーニングしているから。大丈夫」

「そっか。トレーニングしているんだね。実は僕もトレーニングしているから、いつか一緒にやろうよ」

「あ、あぁ……。やりたい」


 そんな会話をして一段落したら、すぐに別の女子に話題を振る。


「テスト勉強は順調?」

「えぇ。バッチリよ」

「僕も。今回のテストも自信あるよ」

「直人くん、いつも上位だから。テストなんて楽勝でしょ?」


 前世の記憶があり、一度勉強したから。他の人と比べて、かなりのアドバンテージがあるのは確かだ。だけど思い出すために、ちゃんと一から勉強もしている。忘れている知識も多いし、前の常識が通用しない価値観のズレなどもあるから。


 優位な状況を失いたくないので、小さな頃から勉強は頑張ってきた。勉強するのは面倒だったけれど、その努力を褒めてくれる人が多かったから好きになった。だから楽しく勉強を頑張ることが出来た。


「楽勝じゃないよ。ちゃんと勉強しないと、やっぱり良い点は取れないから。また、一緒にテスト前の勉強会しようよ」

「うん。直人くんと一緒に勉強すると捗るから、とっても助かるのよ」


 そんな約束を交わしたり。


「またコンビニで、オススメの新商品が発売されてたよ」

「え? なになに? どんなやつ?」

「一口で食べられる、フルーツサンドなんだけど。直人くんも気に入ると思う」

「わぁ! 美味しそうだね! 食べてみるよ」

「ぜひぜひ!」


 耳寄りの情報を教えてもらったり。僕が、美味しいモノを食べることが好きなのを知って居る女子たちが、次々とオススメを紹介してくれる。話を聞いたら、近いうちに必ず食べてみて、オススメしてくれた人に感想を伝える。そして、美味しいと思ったら他の人にオススメしてみたり。


 電車が来るのを待ちながら、女子たちと積極的に会話をしたり触れ合ったりする。わずかな時間も無駄にしない。周囲の視線も気にせず、やりたいようにやる。


 僕は、彼女たちと一緒に居るだけで喜ばれる。僕も、女性と触れ合うことが出来て嬉しい。お互いに幸せになれる関係が築けていると思うんだ。

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