第2話 幼馴染の女性達
朝の用事を済ませるとちょうどいい時間になったので、学校へ行く支度を済ませて家を出る。戸締まりを忘れないように気をつけて。それから、すぐ近くに建っている
「はいはーい」
家の中から、元気な女性の声が聞こえてくる。そして、すぐに玄関の扉が開いた。
「おはようございます、
「おはよう、
今朝は、母親ではなく長女の由美子さんが出迎えてくれた。すでに就職していて、会社勤めをしている大人のお姉さん。スラッとした長身で、髪も長い黒髪をポニーテールにしている。目鼻立ちの整った綺麗な顔立ちの女性だ。
「
「ちょ! まって! すぐ行くからッ!」
由美子さんが家の中に呼びかける。すると奥からバタバタした返事と、ドタバタと大きな足音が響いているのが聞こえてきた。いつものように今朝も、かなり慌てているようだ。
「ごめんね、直人くん。あの子また、ギリギリまで寝てたみたいで」
「いえ、大丈夫ですよ。まだ時間に余裕はあるので、学校に遅刻することはありませんから」
「ほんとに? ありがとうね。……ったく、男の子を待たせるなんて本当にダメな妹なんだから」
そう言って、由美子さんは大きなため息をついた。
「直人くん、おはよう」
「おはようございます、
由美子と一緒に玄関で待っていると、出てきたのは森住家四女の遥さん。金色に近い茶髪でショートヘア、ギャルっぽい見た目の女性。白シャツにデニムという、ラフな格好。彼女も、今から学校へ行くようだ。しかし遥さんは、高校生ではなく大学生。なので、僕たちとは別の通学ルートを行くことになる。
「また、麻利恵の奴が待たせてるのね。私だったら、直人くんを待たせることなく、もっと早く家を出れるんだけど……」
「いえいえ、少しぐらい待たされても気にしていないんで大丈夫ですよ。その間に、遥さんや由美子さんと会って、お話することが出来たんで嬉しいぐらいです」
僕がそう言うと、遥さんは笑顔を浮かべた。そして次の瞬間、彼女の表情は曇ってしまった。
「あーあ。私も直人くんと同い年だったら、一緒に楽しく学校へ行けたのになぁー。同級生になりたかったなぁ。本当に残念だわ」
遥さんは、心の底から残念そうに言った。朝から、そんな表情にさせてしまうのは申し訳ない。やっぱり、女性には悲しそうな表情よりも笑顔で居てほしい。だから、僕は言った。
「また、休みの日に二人で遊びに行きましょう」
「え? 本当に? いいの?」
「もちろん、いいですよ」
「やった!」
遊びに行こうと誘ったら、遥さんは嬉しそうな顔になって僕の手を握った。
――ギュウゥゥゥッ! とても強い握力を感じた。ちょっと痛い。
「手を離しなさい、遥。直人くん、痛がってるでしょ。それに、男の子をそんな風に触ったりしたら危ないから止めなさい。直人くんじゃなかったらセクハラで訴えられてるかもしれないから、本当に気をつけなさいよ」
「あっ! ご、ごめんなさい」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
由美子さんの注意を聞いて、パッと手を離した遥さん。そして、頭を上げて謝ってくる。僕は気にしていない。むしろ、女性と触れ合えたことに喜びを感じている。
だけど世間一般の男性は、女性が軽く触れただけでセクハラで訴える人が居るのも事実だった。それを考えると、遥さんの行動は危険な行為だと言えるだろう。
「いつまでも直人くんとおしゃべりしてないで、さっさと行きなさい」
「わかったよ。行ってきます」
「行ってらっしゃい」
僕が手を振って見送ると、遥さんは笑顔で手を振り返してくれた。そして、機嫌よく出かけていった。
「あの子、今日の授業は3限からって言ってたのに。こんなに朝早く家を出る必要はないじゃない。多分、直人くんとお話したいから早く出て行ったのよ」
「やっぱり、そうですか」
由美子さんが教えてくれた。大学の3限ということは、午後からの授業ということになるのだろうか。そうすると、こんなに早く家を出る必要はない。もしかしたら、他に用事があったのかもしれないけれど。
僕も、遥さんがお話したいという気持ちには気づいていた。そして、由美子さんの気持ちについても。
「由美子さんも今度、二人で遊びに行きましょうね」
「……私も、いいの?」
「もちろんですよ。由美子さんとのドライブ、とても楽しかったです。だから、また由美子さんの運転する車に乗せてください」
「わかった。直人くんのために、とっておきのドライブコースを考えておくわ」
そんな会話をしていると、ようやく麻利恵がやって来た。学生服を着た、黒髪でショートヘアの女性。寝起きなのか、少し髪の毛に癖が残っていた。だが、その容姿はとても整っていて、まるでモデルのようにスタイルもいい。だから、寝起きの姿でも美しいと思えた。
彼女だけでなく、森住家の皆が美人だった。というか、彼女たちだけでなく、この世界には美人の女性が多い。それなのに、他の男性たちの興味が薄い。これも、僕の価値観がズレているからなのか、美的感覚が狂っているのか。
でも、周りに美しい女性が多いと思えるのは幸せなことだった。やっぱり、見た目って大事だから。僕も気をつけている。周りからよく見られるように、日々努力していた。
っと、そんなことを考えるよりも。
「ご、ごめん! かなり待たせちゃった」
「全然、待ってないよ」
「本当に? ごめんね」
「大丈夫だから。じゃあ、行こうか」
「うん」
そんなに謝る必要はない。さっさと行こうと促したら、麻利恵はホッとした様子になった。
「それじゃあ行ってきます、由美子さん」
「行ってきます、姉さん」
「気をつけて。麻利恵、直人くんに何かあったら大変だから。そうならないように、貴女が絶対に守りなさいよ」
「わかってる。気をつけるよ」
由美子さんは、何度も麻利恵に念を押した。その言葉に対して、麻利恵は真面目な表情で答えていた。
こうして僕と麻利恵の二人は、並んで歩き始めた。ここから最寄りの駅まで歩き、電車に乗って学校へ行く。
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