第41話~GII札幌記念《後編》~
最新オッズ
1番人気ステイファートム3.5倍
2番人気ドゥラブレイズ3.8倍
3番人気ホワイトローゼンセ5.6倍
4番人気ディープゼロス5.9倍
5番人気ジェミニリスト11.1倍
6番人気サザンプール13.2倍
【馬番】
①シュゼンレート
②ジェミニリスト
③メリッサ
④ドゥラブレイズ
⑤ライドオンザタイム
⑥ホワイトローゼンセ
⑦ライト
⑧ディープゼロス
⑨ステイファートム
⑩トーセンゲート
⑪マカマカ
⑫シラハテングラック
⑬クラフトオー
⑭ネイチャールビー
⑮ウイングロード
⑯サザンプール
《さぁ、今年の夏を締めくくるスーパーGII札幌記念の枠入りは順調です。最後にサザンプールが収まりまして……スタートしました!
綺麗なスタート! 大きな出遅れはありません。さぁそして注目の先行争いは……やはり逃げるぞジェミニリストだ! そしてトーセンゲートが競りかけるように2番手そして、ステイファートム休み明けですが早め3番手!
さぁ注目の先頭争い! ジェミニリストとトーセンゲート、全く譲ることなく2馬身、3馬身と差を広げていく! ステイファートムはその後ろ!
そしてそのステイファートムを見る形でサザンプールが居ます。その後ろにはクラフトオー!そしてディープゼロスとドゥラブレイズはここ
そしてホワイトローゼンセはドゥラブレイズの後ろにいました。ネイチャールビー、ウイングロードは後方といった所。こういった形で第1コーナーを回ります!》
「良いスタート!」
横川さんの声の調子。俺としては最高だったと思うが向こうも好感触のようだ。元人間として出遅れなんて有り得ねぇよなぁ!?
という訳で今日もいつも通りの位置取りだね……おっ、ジェミニリストが前にいるな。いつもあいつ居るから位置取りが分かりやすくて助かるわ。
んでもう1頭いるな。こっちは……有馬記念で俺が先頭を引っ張る原因になったトーセンゲートのおじさんじゃねぇか!?
お、お、そのまま2人で行くの? 着いて行ったら疲れそうだしちょっと離れて……大体3馬身ぐらい差を取って追走するか。
そんで後ろに俺のストーカーさん……失礼、弥生賞からずっと俺をマークしてるサザンプールがいて、隣にクラフトオーね。見知った顔が多いな。
ここからじゃ見えねぇけど、ディープゼロスとドゥラブレイズはさらにその後ろかな? そんでホワイトローゼンセのおじさんも見当たらねぇ。
今回のレースは大体皐月賞と同じぐらいだろう。なら、初めて戦った有馬記念より500mほど距離は短い。このレースなら距離適性的にその真価を発揮するんじゃないのかと予想しておく。
《さぁ第2コーナーを回って先頭はジェミニリスト。大阪杯2着の実力派逃げ馬。そのすぐ後ろに同じく逃げ馬2年前の天皇賞・秋勝ち馬トーセンゲートがいます
そこから5馬身ほど離れてステイファートム。有馬記念2着以来の復帰戦ながら1番人気を背負っています。そのすぐ後ろにGII金鯱賞勝ち馬のサザンプールです
並びかけるようにGIII中日新聞杯勝ち馬のクラフトオーがいます。その後ろにシュゼンレートがいて、皐月賞馬ディープゼロスはここに居ました!
ヴィクトリアマイル4着の牝馬メリッサ、父が最後に走ったレースで久しぶりの勝利を飾れるかマカマカはここにいます
その走りに武運を掛けてシラハテングラック。さらその隣に居ました、GI戦線で活躍する去年の覇者、2番人気のドゥラブレイズです
最初の1000mはなんと57.2秒!? いくら何でも早過ぎないかこれは!? 大丈夫なのか? 既に6馬身ほどの差ができているぞ!
さぁそして去年の天皇賞・秋勝ち馬のホワイトローゼンセ3番人気はちょうど中段と言ったところ。そしてここに去年のエリザベス女王杯で波乱を演じたGI馬ライトがいます
ウイングロード重賞3勝牝馬はこの位置。時の流れに乗るかのような末脚は今日も炸裂するのかライドオンザタイム。そして香港カップ2着のネイチャールビーはなんと最後方から競馬を進めています!
さぁ、さぁ、既にジェミニリストとトーセンゲートの逃げは後ろに馬群から8馬身ほどの差ができています! 既に第3コーナーに差し掛かっている! 波乱の匂いがしてきました!》
『お前、前より弱そうになってね?』
『は? ……サザンプールか。何だよ急に、弱くなったって……そんな訳ないだろ』
『……そうか?』
『そうだよ』
俺のストーカーさんが途中で話しかけてきた。しかも失礼だなおい!? こちとら怪我明けじゃぞ!? ……それを言い訳に負けてもいいって訳じゃねぇからな!? 勘違いすんなよ!?
「……怖いな」
……あぁ、怖い。弥生賞の時もジェミニリストの奴を捉えるのに苦労した記憶がある。あぁいう強い逃げ馬ってのは意識を割かれるし体内時計もどうしても狂ってしまうからな。
でも、俺の足があれば足りるだろう。……ん? まだ少しだけ身体が重たい気がする。やば、ここまで負荷がかかることは何度もあった。でも久しぶりだからか、心臓がバクバクしてくる。
届くのだろうか、その不安も急に襲いかかってきた。……あれ、レースってこんな恐ろしいものだっだっけ? ……あぁそっか、怖いのは……無理をして、また怪我をすることか。
だから身体がいつもよりダルく感じてしまっているんだ。タマモクラウンの奴の最後を見てしまったから、本気を出せない身体になっているのかもしれない。
『でも、そんな足枷クソ喰らえだ!』
俺は命を燃やして走っている! この言葉を俺はゼッフィルドの奴に吐いておきながら、怪我するのが怖くて脚を止めた。
なんて自分勝手な奴だ。だから勝てないんだよ! 俺はまた負けたいのか? いいや冗談じゃねぇ! 余計なことは考えるな! 俺は勝ちたい! なら今は、1着でゴールすることだけ考えてろ馬鹿な俺!
『……はは、それだよそれっ!』
後ろでサザンプールの奴が勝手に解釈違いを起こして勝手に納得したような発言をしているが無視だ! さぁ、怪我明けだろうが勝つぞ俺は!
前の2頭だけじゃ、サザンプールだけじゃねぇ。後ろにはドゥラブレイズ、ホワイトローゼンセのおじさん、それに……ディープゼロス、アイツがいるんだ。
唯一、俺を2度も負かした相手が。この舞台がGIじゃ無かろうが知ったことか! 三度目の正直だ。あいつを破って勝利を手にし、俺は堂々とGIを制覇しに行く!
《さぁ、第3コーナーから第4コーナーを回ってジェミニリストとトーセンゲートの2頭だけが最後の直線を迎えました!
ステイファートムが来た! サザンプールがきっちりマークしている! ドゥラブレイズとディープゼロスが来ている!
ホワイトローゼンセも伸びてきている! GI馬ライトは下がっていく! 間を割ってマカマカ!
先頭2頭の足が鈍った! 力尽きたか!? 先頭ジェミニリストにステイファートムが並んで交わした!》
前2頭はお互い譲ることなく本気で走りすぎて力尽きたようだ。まぁ鞍上の人も抑えようとしてたのに言うことを聞かなかったからな。
さぁこっから先頭を引っ張るぞ! ここの直線はコースの端から端まで走るから長く感じるが、実際は日本ダービーで走ったコースの半分とちょっとしか存在しない。
つまり逃げ切りやすいという事だ! さぁかかって来いサザンプール! ドゥラブレイズ! ホワイトローゼンセ! そしてディープゼロス!
「弾けろファー!」
《先頭ステイファートム! 最内サザンプール2番手! 真ん中からドゥラブレイズ! 外からホワイトローゼンセ! ディープゼロスも頑張っている!
内からサザンプール! しかしステイファートム譲らないぞ! ドゥラブレイズ伸びてきている! ディープゼロスは足色が鈍い!》
『そんなお前を倒してこそ価値がある!』
『やって見やがれ!』
サザンプールが最内から切り込んでくる。アイツ、俺に変な幻想抱いてないか? 俺ただのGI未勝利馬よ? 久しぶりだから脚がキツくなってきた。
でもまだ動く! 走れる! なら止まるな! 俺はGIに向けてこんな舞台で負けられないんだ! 後ろにライバルが居ようが関係ねぇ! どこからでもかかって来い!
《外から一気にホワイトローゼンセ来たァ! これがGI馬の意地届くかどうか! ステイファートム先頭! ステイファートム先頭! サザンプールは離されていく!
交わしたドゥラブレイズが2番手に上がった! さらにそれを交わしてホワイトローゼンセか!? この3頭だ! そして2頭になった! ステイファートムとホワイトローゼンセの一騎打ち!》
『ちくしょぉぉぉ!!!』
『俺の、ターン!』
『どけ年下! 俺が全てを蹴散らしてやる!』
サザンプールの負け犬……いや負け馬の遠吠えにドゥラブレイズの声! ホワイトローゼンセのおじさんも迫ってきているな!
ホワイトローゼンセが隣に並びかけてくる。ものすごい加速力!? やっぱこの距離なら強いぞ!
「粘れ! あと少し!」
おうよ、横川さん! 死んでも負けん!
『いいや、捉えた』
ホワイトローゼンセが無慈悲な言葉と共に迫ってくる。嘘だろおじさん、まだギアを隠してやがったのか!? くっ、1馬身差、3/4馬身差、1/2馬身差、1/4馬身差とグングン差が詰まる。
《ステイファートム! ホワイトローゼンセ! ホワイトローゼンセ迫る! ステイファートム粘る! さぁ、この1着は際どいぞ! どっちだどっちだ!》
うわぁぁぁぁ無理ぃぃぃぃ! と心の中で思う直前に俺はゴール板を無事に通過した。
《ステイファートムが逃げ粘ったァァァァ!!! 勝った勝ったぞステイファートム! 復帰明け? 一叩き? 太め残り? なんだそれは? 関係ないッッッ!
GI馬ホワイトローゼンセの猛追を見事に凌ぎ切りました! 来たるべき秋競馬に向けて、ここでは負けられません! まず見据えるのは秋の盾か!
惜しくも2着はホワイトローゼンセ。3着ドゥラブレイズ。4着は離れてサザンプールとネイチャールビーの争いという所か》
「勝てた! でかいぞこれは! 勝てた!」
横川さんも笑顔でガッツポーズをとって喜んでいる。お、宮岡さんと荻野さんも向こうで手を振ってるじゃねぇか。はは、すまねぇ皆。
最後に勝ったのは……GII神戸新聞杯だったか。もう1年近く俺の勝つ姿を見てなかったんだもんな。悪かったよ本当に。
にしてもホワイトローゼンセおじさんの猛追はヤバかったな。あれ、もう少し直線が長かったら……例えば府中の東京競馬場で開催されてるレースだったら捉えられてたぞ。
『チッ……次は覚悟しておけよ?』
ホワイトローゼンセのおじさんが後ろで舌打ちと共に宣戦布告をしてきた。おぉ怖ぇ……。にしてもドゥラブレイズの奴も何だかんだ来てたし、サザンプールの奴も頑張ってたな。
でも、勝った……勝ったんだ! その事実をしかと目に焼き付けるために掲示板の方を見る。そこには1着に俺の番号が書かれていた。
1着ステイファートム
2着ホワイトローゼンセ クビ
3着ドゥラブレイズ 1 1/4
4着サザンプール 2
5着ネイチャールビー ハナ
……あれ、ディープゼロスの奴は? ……まさかアイツ、怪我したんじゃ!? だから来なかったんだな! だってアイツが来ないなんて有り得ねぇ。
そう思って周りを見渡す。ディープゼロスは苦しそうにゆっくりと歩いていた。見たところ、怪我をしている様子はない。ただ息切れが凄いだけだ。
『おいゼロス! お前大丈夫か!?』
『はぁ、はぁ、はぁ……うる、さい』
『お前、実は体調悪かったんだろ? だってお前が掲示板にも載れないなんてそんな事ある訳な──』
『うるさいっっっ! ……二度と俺に関わるな。そして忘れろ、俺の事なんて……』
『…………は? おい、待てよ! 待てって!』
俺の事なんて無視してゼロスの奴は引き返そうとする。なんでだ? 俺とお前はライバルなんじゃなかったのか!? それを関わるな、なんて無理言うな!
『……ふざけんなよ! なんだよそれ! 俺は認めない! こんな勝ち方認めないからなぁぁぁ!』
『……俺もだよ』
ゼロスは小さく何かを呟いて、そのまま去っていった。……何なんだよ! なんで勝ったのにこんな気持ちにならなきゃいけないんだよっ!
くそがァァァァァ!!!!!
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