第二章

第10話 初めてのダンジョン


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 ■ 初めてのダンジョン

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 ▼△▼ 本番前の訓練 ▼△▼

 ライセンスを取得したからって若者のようにすぐにダンジョンに突入する勇気はないのでライセンスを取得後2週間、信二は山にこもって訓練を重ねていた、とは言っても山にこもってサバイバルなど初心者には無謀極まりないため、そこは安全を見越してキャンプ場をチョイスした。

 

 当初はテントを張って生活を試みたが雨で流されそうになったり蚊やブヨに悩まされてバンガローを借りることで随分生活環境は改善された。

 

 訓練と言っても指導者がいるわけでもなし、経験があるわけでもないので自己流だ、そんな訳で主に基礎体力アップを中心にネットを見ながらメニューを組んでトレーニングをした。

 トレーニングの成果は何も変わらなかった。どうやらダンジョン内でやらなければステータスには反映されないようだ。

 

 結局、訓練は1泊2日で終了してダンジョンへ向かうことにした。

 

 ▼ ダンジョンへ ▼

 

 ふう~やっぱり初めて一人でのダンジョンは緊張するな。

 ダンジョンの側に併設されているダンジョン協会の支部の中に買い取り所や販売のコーナーが併設されている。

 

 規模が大きいダンジョンなどでは飲食、シャワーのみならずいろんな設備が揃っていたりする。

 

 ※ その前にポーションを買っておこう ※

 ポーション

 ノーマルポーション(通常ポーションと呼称)1万円

  通常の切り傷などに対応

  

 初級ポーション 50万円

  怪我全般、骨折程度の怪我までに対応

  

 中級ポーション 150万円

  初級に手足が切断されてもすぐなら接合することが可能

  

 高級ポーション 500万円

  切断直後(修復されていない状態)なら復活すること可能

 

 

 とりあえずお金のあるうちにある程度揃えて置いたほうが良いだろう。

 

 「すいません、ポーション下さい。

 あのう、どうなふうに揃えてたら良いでしょうか?」

 販売コーナーのレジに居るお姉さんに聞いてみた。

 レジのお姉さんはとっても愛想がよさそう!!、おっさん俺にも丁重に説明してくれる。

 まあ、俺には不釣り合いなのはわかってるんだけどね。

 

 「そうですねぇ、初心者の方ですよね。でしたら予算が有るなら一通り揃えておいたほうが良いですよ。

 できればノーマルと初級は絶対と言っていいです。できれば中級を揃えておいたほうが良いですよ。」

 

 「ありがとうございます。でしたら一通りもらおうかな?」

 ノーマル10本、初級3本、中級3本、高級1本を購入した。

 

 はぁ、このポーション代金を回収できるのはいつになることやら

 

 男性用更衣室で着替えてロッカーに100円を入れて着替えをなおす、100円は後で戻ってくる仕組みでリーズナブルだ。

 

 まあ、Fランクでも年間1万円の会費を取られるのだから利用しない手はない。

 しかし着替えの時の視線が結構痛い。

 よっぽどイケメン OR 強者とでも思われてるのか?

 ちがうだろうなぁ~良い歳したおっさんがマジかよってところだろう。

 

 痛い視線がハリネズミのように刺さる中、コソコソとダンジョンに向かう

 今日向かうのはチュートリアルダンジョンを除いて下から2番めのEランクダンジョン、通称宇美ダンジョンだ。

 

 入り口でライセンスカードを渡す。

 係員が一瞬驚いたように俺の顔を見たが、すぐに取り繕った。

 

 「ここはEランクダンジョンですが、1層でも奥の方では稀に強いモンスターが出ることもありますので気をつけて下さい。

 では、ご安全に!」

 

 「はい、無理しないように気をつけます。」

 

 ダンジョンの中に入る

 ダンジョンの中に入ったら剣を握って存在の確認と気合を入れる。

 

 ダンジョンの中は結構明るい、場所によってはかなり暗いダンジョンも有るらしいが...

 

 5分ほど歩くともう、入り口はみえない。

 結構、広い場所に出たので下手すれば迷いそうだ。所々に岩があり岩陰からなにか出てきそうで恐怖で胃液が上がりそうなのを飲み込む

 

 大丈夫だ、マウスかスライムしか出ないはずだ。

 岩陰に生えると言われるオキシドリン草を探す、初級ポーションの原料で10本1000円になる

 

 比較的簡単に見つかると言われているがなかなか見つからない。

 30分ほど探してようやく2本見つかった。

 この薬草は10本単位なので後8本見つけないと換金できない。

 

 さらに探していいるとアシッドマウスが襲ってくる。その距離約5m!

 剣を抜いて構え……飛びかかってきたところを思いっきり蹴り上げてやった。

 アシッドマウスは数m飛び、落ちて痙攣している。

 

 「悪い!、俺も生きていかなきゃならないんだ。ゴメン!」

 そう呟くと剣をマウスの首に突き立てた。

 

 一瞬、体がぼやっと光った。

 ん?、鑑定してみるとレベルが2になった。

 ネットの情報によるとレベル10まではトントン拍子に上がるらしい、それから段々とレベルが上がるに従ってたくさん倒さないと上がらないらしい。

 ちなみにレベルの上限は99だそうだ。

 

 国内の最高値は56で当然ながら当初から潜っている自衛隊員だ。

 

 「おっ、そうだ、魔石を回収しないとな。

 

 ん?、おおっ、これはもしかして...」

 アシッドマウスの消えた後にはマウスと半透明に水晶玉のようなものが落ちていた。

 早速、鑑定してみると風魔法Lv01だとわかった。スキルオーブは確かダンジョンの外に持ち出せば24時間で使えなくなるよな。うん、使ってしまおう。これで俺も魔法使いだ。

 

 使うように念じると5秒ほどで体に吸い込まれていった。

 体に吸収されるときに温かいものが入ってきて何とも言えない光悦感に見舞われた。

 

 ステータスを鑑定してみるとスキル 風魔法Lv01、MP10 となっていた。アシッドマウスが風魔法を残す確率は1/3000となっていた。

 

 その後、数匹のアシッドマウスが出てきたが、ケリと短剣で止めのコンボで倒してきた。

 

 「最初、怖かったマウスちゃんもなんだか楽にやれるようになって来たなぁ...」

 

 おっ、そうだ今度、マウスが出てきたら魔法を使ってみるか、えっと使えるのはウィンドカッターだな。

 自分の使える魔法は頭に浮かんでくるのが不思議だ。

 

 なかなか、出て来ない……。

 仕方ないので人の大きさぐらい岩に向かって空打ちしてみる。

 

 「ウィンドカッター!!」

 

 ”スパッ”と音がした後、”カツ”って音がしたかと思うと斜めに切断された岩が崩れ落ちた。

 

 この後、出てきたアシッドマウスを調子に乗ってウィンドカッターで倒していたら凄い虚脱感に見舞われて慌ててステータスを鑑定してみるとMPが1になっていた。

 危ない、危ない、これが0になると意識を失うんだっけ...

 

 もう今日は帰ろう……。

 そう思ってふと見ると第二層への階段が見えた。

 

 「いくか?」

 

 いや、いや、初めてのダンジョン、おまけにMP0でダダ疲れての状態。あまりにも無謀と言うもんだ。しばらくはこの階層でなれてから行くべきだな。

 

 「うん、帰ろう。」

 

 しかし、こんな奥まで来るつもりはなかったんだけど、いつの間にか来ていた。やっぱりダンジョンは怖いな。

 

 出口に向かおうとしたときに第二層からやってくる物音が聞こえてきた。

 やばい!、二層の魔物じゃないよな。ここでは隠れるものもないし、仕方ない。剣を抜いて構える。

 手に汗をかいているのが気持ち悪い。

 

 ■□■ 再会 □■□

 

 「おい!、一層についたぞ、出口までもう少しだ!頑張れるんだ、寝るな!!、意識を失っちゃ駄目だ!」

 女性を両脇から肩に抱いて叫ぶように上がってくる数人のパーティだった。

 

 「おい、大丈夫か?、うわっ、ひどい怪我だな、ポーションはつかったのか?」

 つれられて女性を見るとあちらこちらに血が飛んでいるが右膝からしたがない……

 うわっ...よく見ると後続の男が持っているのはおそらく彼女の足だろう。

 

 「いや、ポーションは切れてて、あぁ、でもこれだと中級は必要だ、元々持ってない。済まない先を急ぐ...」

 

 「おい、そこに寝かせろ!、中級のポーションは持ってる」

 おれは慌ててリックをおろしてポーションを取り出す。

 

 「済まない、たのむ...」

 寝かせた女性の足を見ると比較的切れに切断されているこれならポーションの範囲内だろう。

 

 ペットボトルの水を患部にかけて汚れを流す、確か多少の夾雑物は大丈夫だったはずだ。。。

 

 切れた足をつけるようにしてポーションを振り掛けると患部の周辺が発光し両方の切断面がまるで意思を持つかのように蠢きつながっていく...

 

 数分後、切断された足は傷跡もなくつながった。

 彼女は途中で意識をなくしたようだ。

 

 「ふう、大丈夫みたいだ。」

 落ち着いて見回すと、他の3人のうち二人は負傷しているみたいだ、一人は恐らく骨折しているだろう。

 

 「おい、おい、あんたら大丈夫か?、初級ポーションなら2本有るぞ?」

 

 「いえ、もう出口も近いですからなんとか辛抱できます、」

 なんとか答えながら顔は苦しそうにしている。

 恐らくポーション代金の事を気にしているんだろう、それを俺が押し売りするのも違うだろうな。

 

 「彼女が目を覚ますまでもう暫く掛かるだろう、君たちは先に戻って協会に連絡しておいてくれ。

 救援が来る前に目が覚めれば一緒にもどってくるよ。」

 

 3人は顔を見合わせて少し話していた。

 「本当にすいません、ではお言葉に甘えてお願いします。」

 

 「うん、頼まれた。大丈夫だよ。」

 「では、戻ります。」

 彼らはそう言うと支え合うようにして出口へと向かっていった。

 

 うん、聞こえてた。

 彼女、おっさん一人置いて大丈夫か?、変なことされないか?

 

 大丈夫じゃない?、中級使ってくれるぐらいだし。

 そうだな、こっちもあんまり余裕はないし。。。

 決まりだな。

 

 うん、ちゃんと聞こえてたよ、おじさんショックだけどまあ、面識もないんだから当たり前か……

 

 「あれ?」

 気を失っている女性の顔を見るとどこかで見た顔だった。

 

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