第7話





 ◇◇◇◇





…………誰だろう。一体。



昨日、夜更かしをしてしまい。眠かった。

半分目が開いているけどうたた寝している。

そんな感じの時だった。


教室の中、一陣の突風が吹いた。


瞬間的に僕は半分開いている目をつむり顔、目をかばうように手を顔に近づけた。


――――ぱしっ。


何かが指に挟まるように飛んできた。

すかさず掴み突風が収まると同時に手の中にあった物を見た。



衝撃が走った。

言葉通り全身を何かが通り抜けるかのように巡った。


脳内が覚醒する。



視覚から。

始めは視覚だけだったのだが、衝撃と共に何とも言えない感覚に囚われた。


この感情は…………快楽、いや。

歓喜だろうか?


単なる写真を見ただけで、そんな感情が芽生えるなんて思わなかった。


口元が震える。

勝手に「はははは」と笑い声が出た。


今思えばこの瞬間。

僕は虜になっていたんだ。


この写真のおしりに。



いや、……何を自分が考えているのか解らなかった。

冷静になれ。


パーツだぞ? そのパーツ自体は唯のパーツだ。


……そして写真だ。


顔すら写っていない。

上手い所で見切れている。


しかし写真の構図は神視点だった。

このおしりの持ち主の顔が見たい。


一体誰なんだ?

こんなおしりの持ち主。顔が見たくなるだろ!


僕はもう落ちていた。

顔が……火照っている気がする。


とても熱い…………。


……そんな疑問が脳内を駆け巡った時。

不意に後ろから声を掛けられた。

ビックリさせるなよ。


誰だ、こんな時に……。

その相手は僕の目の前に来てこう言った。


「…………えっち」

「……………………」


まぁその通りなのだった。

言い訳は出来ない。


僕の顔は今、恥ずかしいぐらいにとろけているのだから。


相手の女子は南沢さん。


クラスでは……いや、学年でも頭が良くて人気が高く容姿端麗という言葉が似合いそうなハイスペック女子。


しかもエッ…………クラスメートだった。


この子に告白されて断る人はいないだろうな……。

そんな思いは学年男子の共通認識だった。


そんな子にエロ魔神的に認識されてしまった。

とても恥ずかしいと共に何故とかの疑問やどうして僕がとかの感情が重なった。


とても恥ずかしい。


「…………その写真ね。私のなの……返してくれる?」

「…………これは君なの?」


思わず聞いてしまった。

……考えも無しに。


きっとセクハラに近い失言だったが彼女は。


「良いでしょー。私の宝物なんだー。あげないよ?」


フフフと話しながら南沢さんは僕の手にある写真をピッと簡単に奪った。


神からの贈り物が奪われた最後の瞬間、ギリギリまで写真からも目は離せない。


脳内に焼き付いただろうか?


……彼女は言った。

宝物と。


という事はこのおしりは彼女では無い他の誰かだ。

目の前の彼女は目的は達成したとばかりにウインクして行ってしまった。それはそれでおおうと脳が揺さぶられる。


少しだけ、今あった出来事を脳内で繰り返す。

情報量が多すぎた。



…………今、思えばあれは神風だったのだろうか。

一体、あのおしりは…………誰なんだ?


……そもそも僕は女子をそんな目で見たことが無かった。

普通は顔とか……胸とか。

性格が可愛くて自分に優しいとか。


僕の女の子を好きになる基準は結構単純だろうけどそんな感じだった。


世間的にはちょろい。

でも男なんて大体そんな感じだ。


――――いやいや、もしかして僕はおしりフェチだったのか?


気がつかなかっただけで……しかし、彼女はこう言った。


宝物と。


何か変な具合に振り出しに戻った僕は小刻みに震えていた。

これは…………喜び、いや歓喜。


面白い。

良いじゃ無いか。

へぇー。


鬼と言われた僕に挑戦するとは。

あのおしり…………誰か、必ず突き止めてやる。


ヒントは脳内に保存したおしりと、南沢さんの宝物発言。


此処から開始だ。待ってろよ? (おしり)

必ず突き止めてやるからな! (おしり)



何処かで変に可愛らしいくしゃみが聞こえたとき。

それこそが眠れる獅子を起こした瞬間だった。

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