ヒロイン男子はイケメン彼女に打つ手なし!?
クラウン メアリー
プロローグ
雪が降っている。
木には枯葉一つなく、痩せ細った体を風に揺らされながら季節を物語っている。
息を吐くたびに白い靄がかかるのは冬ならではで特別な感じがする。
高校一年生の冬。
いつも通ってる本屋に今日もまた足を運ぼうと駐輪場に向かっていると雑談している女子のグループがあった。
盗み聞きもなんだしすぐに立ち去ろうとしたがその中の一人の少女がこちらに気づいて俺の名前を言う。
「夢恋君!!」
その子の声に他の女子もこちらに気づく。
俺の名前を呼んだ少女———正確に言えば俺の彼女の天城司(あまぎつかさ)が手を振りながらこちらに向かってくる。
身長170センチ、顔面偏差値70越えの超絶イケメンスタイルの彼女は男女問わず人気者でいつも誰かに囲まれている。
「今から帰るところ?」
「…おお」
にかっと笑う司に少し素っ気なく返事をしてしまったが司は気にしてない様子。
寒そうなミニスカートから飛び出す細長い足を俺の前に差し出す。
「行かせないからな〜」
どうやら俺が帰るのを邪魔しているつもりらしい。
「ふふ」
イケメン顔を持ち合わせてこういうところだけ無邪気なのが司のいい所だ。
「ミニスカート寒くないの?」
「どっ寒いよ」
スカートをぴらぴらさせて寒さをアピールしてくる。
……ちらりと見えた黒色の下着は見なかったことにしておこう。
「あの〜」
「夢恋君、初めまして」
司と話しててすっかり忘れていたが見知らぬ女子二人組が司の後ろにいた。
一人は同じクラスの戸田千鶴さん。
もう一人は初めて会った人だ。
「この子は花塚こはねだよ。部活が一緒なんだ」
司が補足の説明を入れてくれる。
「あ、初めまして。夢恋紅麗亜(ゆめこいくれあ)っていいます。司がお世話になってます」
俺が頭を下げると慌てたようにこはねさんも頭を下げる。
「ゆ、夢恋君って男の子なんだよね?」
「ん?そうだけど?」
こはねさんが俺のことをジロジロ見ながら疑いの目を向けてくる。
「ピンクのショートボブに猫のヘッドホン、可愛いパーカー羽織ってるから女の子みたいだなって」
あー言われてみると確かにそうかもしれない。
女子になろうとは思っていなかったが、与えられた身体を好きになりたかったからこそ今のスタイルを選んでいる感じだ。
「気になるなら確認してみてもいいけど?」
少し揶揄ったように言うとこはねさんは顔を真っ赤にして司の後ろに隠れてしまう。
「あまりこはねを虐めないなくださいよ、夢恋君」
「ちょっとだけ揶揄っただけだよん、委員長さん」
赤い眼鏡をクイっとあげてこちらを見てくるのは名良絢音(めいりょうあやね)。
うちのクラスの委員長を務めており、真面目で成績も学年一位とトップクラス。
「司とデートするのもいいですけど、課題はちゃんと出してくださいね?夢恋君、勉強すればできるのにやらないから。二人の邪魔にならないようにそろそろ御暇しますね。こはね行くよ」
委員長はこはねさんを連れて下駄箱に行ってしまう。
「今からどうするの?」
司が俺の予定を聞いてくる。
「んー暇だよ」
ほんとは本屋さんに行きたい所だが、それはまた今度にしよう。
今は司といたい気分なのである。
「え!じゃあ、駅前のスイーツ食べに行こうよ」
「マカロンのやつ?いいね」
自転車の施錠を外して、司を後ろに乗せる。
「寒いなら膝の上にこれひいとけ」
鞄の中からブランケットを取り出して司に渡す。
「いや、落としちゃうかもだし…」
「いいから」
遠慮がちな司に強引に渡す。
「また黒い何かが見えるかもしんないだろ?」
「………………!?」
何かに気付いたのか咄嗟にスカートを押さえ込む。
「………変態」
「さっきスカートぴらぴらやってたのはどこの誰ですか」
司はブランケットを受け取り、膝の上にかかる。
「夢恋君って意地悪………だけど優しいよね」
「……なんのことやら」
自転車を漕いで校門からでる。
後ろからは「他の男子に見せたくなかったんだしょ?」とか聞こえてくる。
そんなの当たり前だろ。
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