第14話 賭け

 電話を終えた修也は溜め息を吐きながら電話切った。

 そう、先程の正孝の電話相手は修也だったのだ。

 俺達は今、倉庫から少し離れた人通りが少なく見晴らしのよい通りにあるベンチで座っている。


 そして、遥かが恐る恐る心配そうな声色で話かける。


「あんなに派手な事やって大丈夫なの?」


「大丈夫だ、問題ない。」


 「...でも、折角わざわざ姿を見えないようにあの男を気絶させたのに.......何故わざわざばれるような真似をしたの?」


 

 

あの男とは扉から呑気な面構えをして出てきた警察のキャップを被った男の事だ。

 気配を消して、首元をコツンと当てて気絶させた。

 


 恐らく遥はと言ってる辺りあのキャップ男に脅すなどをして情報を引き出す事も出来たのに、、、とでも思っているのだろうな。

 確かにそれが有力な情報なら必要なのだがその可能性は十分低かった。

それより、今するべき事は...


 「当然、この戦いは長期戦になればなるほど俺が不利になる。俺の相手は見ず知らずの相手で、恐らくお前達連中すらも手玉に取れるぐらいの権力と金があるからな。先に手を打ったまでさ。それに、、、」



 続きを修也が話すタイミングで遥か少し声を張り上げ、

 

 「でも、だからって……相手に自分の居場所を知らせるのはいくらなんで自殺行為だよ...ここもいつばれてしまうか分かんないのに」




 '何なんだこの女。何故俺に肩を持つ?演技なのかそれとも素なのか?だが、、、今は、、、'


 女の感情はよく分からないのは今に越したことはない。


 「それは、承知の上だ。短期戦に持ち込む場合は多少のリスクは必要になる。今回俺が知りたいのは奴らの力量だ。今回の犯行は俺だと思うのか?俺以外だと考えるのか?そこがこれからの分岐点となる。」




 'まあ、恐らくここまでのやり取りでかなりのやり手だと思うがな、、、。'




 奴らの狙いは分からないが、あくまで俺に何一つとして情報を渡すつもりはないのだろう。



 'あのキャップ男も遥についていた護衛の連中も恐らく何も知らない。'


 ただの駒に過ぎなかっただろう。

 倉庫の周りにはカメラがいくつもあったのに関わらず、その場に修也は十分程しかいなかったが、人が現れる気配どころか不気味な程、静かであった。


 'しかも、あのキャップ男おどろく程、弱かったし......'

 



 しかし、遥は何を言ってるのかと言わんばかりに、


 「どう考えても、貴方だと思われるでしょ?私の護衛が先程の音声を上の者に渡せば疑う余地なんてないわ。」



 「それはどうかな?」




 俺はほくそ笑む。

 まるでこの状況は俺にとっては不幸中の幸いの出来事だ。


 「え、、、つまり...どういう事?」


 

「俺は自分という存在を生まれてこの歳までずっと偽って生きてきた。勿論、この事は誰にも知られていない。」


 

 それをどういう意味を成すのかは奴らが今後の行動で証明してくれるだろう。

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