きっかけ

「まだ、倒れて貰っても困るから程々にね」


女性が喋り終わって姿が見えなくなった瞬間にスーツ集団に囲まれた。


気付いた時には、近くのコンクリートの駐車場で壁際まで詰められていく。


「え、え、なに?どういうこと?」


ざっと20人は超えているだろう。

ふむ、流石の俺でも全員倒すとなれば無傷ではすまないだろうな。



一人一人の構えといい、視線が一朝一夕なんかで身に付けれるレベルではないな。

しかも、先程、情け無い声を上げてたうえ、見た目が細い俺相手に対しても一挙手一投足、油断する事なく観察している。


隙を見て逃げようと思うなら一瞬でやられてしまうだろう。

俺も来られても最低限対応が出来るよう構える。


空気はピリついたままだが、なかなか襲って来ない。


一触即発の状況で俺は覚悟を決め、一人の男に視線を合わせて声を掛ける。


「こん中で一番強いのはあんただろ?」


声色が変わってか、その男は一瞬驚いた顔を見せたが直ぐにポーカーフェイスに戻り、


「だったら何だ?」


なるほど、会話は出来るみたいだ。

仕方ない、暫くはこっちの俺で接するか。


「あんたらが、何者か、そしてあの女の差し金かは知らない。そして、時間が経つとあそこから校門から見張ってた奴らもここに集まる事だろう。どう考えても俺に分が悪くてしょうがない。」


そして、俺は息を吸ってから一段と大きな声で

 

「だが、俺はあんたらの弱点を知っている。

それも、いつでもどこからでも仕掛ける事が出来る それでも闘うか?」


男は苦笑いをして、

「おい、お前一体何者なんだ?」


 こいつらが何者なんか知る訳ないが。

人を蹴る殴るを躊躇っている様子が感じ取れる辺り、そして待ち伏せする位置や顔の表情から見て分かる通りその道のプロではないだろう。

詳しくまでは知らないが恐らく何かを守る為に誰からかに指示をされているという結論にたどり着いた。


そのおかげもあってあの女の思惑に引っかかった訳だが、でも俺が選ぶここから先の選択肢はどう転ぶかは分からんな。


「名乗る程ではない。だがお互いの為、決して悪いようにしないから俺の命令に従ってくれ」


「ほう、その内容にもよるが・・・言ってみろ」


「難しくはない。あの女が指示したようにボコボコにしてくれて構わない。が、やり方は俺が指示をする」



 そう言って俺はフッと笑った瞬間にスーツ姿の男達から一斉に殴られる。



そして、身体中が傷だらけとなった俺は足を引き摺りながら、学校の校門へと足を踏み入れていった。



('今はひたすら耐えよう')





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