三匹のおっさん 異世界を切る チートをもらったおっさん達が異世界を放浪するとき、世の中がなぜか動き出す

蛇ヶ谷四十九

1章 三匹のおっさん、異世界に立つ

第1話 序章

ここではない、どこかの世界。雲一つ無い快晴の空の下、佇む姿が一人。


「神め」


美しい少女がそう言った。


少女の目の前には、折り重なる無数の死体があった。


踏みつけられ、矢で頭を貫かれ、体を袈裟切りにされているものや、首の無い死体もある。燃えて炭になっているものもあれば、綺麗なまま動かない死体もある。


死体は、半数ほどが甲冑や鎧を身に纏っていたが、そうでないものもあった。裸の女性や子供の死体も多くあった。


全ての死体はすでに悪臭を放っていたが、その悪臭の中、死体のたばの合間をがりがりに痩せた老婆がとぼとぼと歩いている。


老婆は、棒で死体の顔に覆い被さった土や草や肉片を払いのけている。おそらく、親族を探しているのだろう。


死体の横には、手足が異常に細く、目玉がぎょろりとし、お腹だけが膨れているように見える子供が何人もいる。彼らは、親がいなくなった子供達であろう。食事はおろか、着る服さえなく、歩くことさえままならず、今にも迫り来る死を待っているような状態であった。


そして、彼らの近くでは、これまたがりがりに痩せた犬やカラスが彼らをじっと見つめている。

おそらく、喰らうために、彼らが死ぬのを待っているのだろう。


「これが、神を信じた者達の末路なのか?」


少女が呟くも、それに答えるものはいない。


少女は、腕輪をはめた細い腕で剣を持つ。


そして、何かを探すように、歩き出す。


「地獄は現世にあった。これを創ったのは神。何故、神はこうも人に試練を与えるのか。人は、生きているうちに幸せにはなれぬのか」


少女は死体の山の中を歩いて行く。


「いや、死んだ後、天国は本当にあるのか。最後の審判、涅槃、バルハラ……本当に神の国は存在しているのか」


その問いかけには、誰も答えない。


「ならば、私は神の敵だ」


少女は、古風な鎧を着けていた。


皮と布で出来た素材に金属を織り込んでいる。


腕輪に足輪。足にはサンダルのようなものを履いている。


目付きは鋭く、地平線の先にいるかもしれない『神』を睨み、ただひたすら剣を持って歩いて行く。


神を倒すために、神と呼ばれる存在を殺すために。


少女……いや、少女に見える何かは、不動の決意のもと、神を殺す旅を続ける。


ガタタン……ゴトトン……ガタタン……


独特の揺れと振動が始まり、その風景が夢幻のように消えていく……

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