二位殿

いよいよでございましょう

見ておりました

ええ、先からずっと

見ておりましたとも

血と潮の匂いは隠せませぬ

我々一門も、もはやこれまで

そこを退いてくださいませ

我が腕の中におわすのは天子です

この御方に忠義を尽くす者があれば

急いでわたくしの後に続きなさい

ああ、なんと不憫な

万乗のお生まれである貴方様でさえ

悪運に引き寄せられてしまうのか

さあ、天子さま

その美しく小さなお手をあわせて

まず東には伊勢に御挨拶を

それから遠く西にあると言う

阿弥陀仏へとお念仏あそばしませ

ここはどうにも辺鄙で

煩わしい場所でございますから

わたくしが極楽浄土という素敵な場所へ

貴方様をお連れいたしましょう

大丈夫

波の下にも都がございますよ

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