?
正気だったはずのあなたは
少しずつ少しずつ
波が陸を削るように
じっくりおかしくなってゆく
発狂
と言うそうです
狂うと書くくらいだから
赤ん坊のように体を振り乱して
元気いっぱいに
暴れ回るものかと思っていたけれど
お医者の
もう長くありません
と言う言葉に合わせたみたいに
弱ってゆくあなたを見て
私は本当の発狂を知りました
それは凪いだ海なのですね
昏い海の底にひとり
閉じ込められることなのですね
あんなにも凛と背筋を伸ばして
前だけをじっと見つめていたあなたが
発狂してゆく姿を見るのはつらいことです
しかし待ってくれと言って
待ってくれるものじゃないから
諸行無常
ただ生きて
あなたを見届けようと
ただ生きて
ゆくしか術などないのですから
私はもう
もう、何も言いません
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます