第22話 ギルドの理由

 俺の疑問にアイリスはこう答えた。


「魔王が復活し、更にモンスターが強力になりました。そのせいもあるのですが……」


「……ですが?」


 俺は首を傾げた。


「自分の実力も知らない愚か者達が、報酬と名声のため背伸びして、高難度のクエストを無理して受注しました。それこそ、見習いの戦士が、いきなりドラゴンの討伐なんて無茶も……」


 アイリスは唇を噛んで悔しそうな表情になった。


「その無茶のせいで沢山の冒険者が犠牲になりました。」


「そっすか……」


 俺はため息をついた。

 俺は一回目の自分の行動を思い出して胸が痛い。


「私達が悪い面もあるんです……」


 アイリスは泣きそうだった。


 つまり、こういうことだ。


 ギルドとしても沢山のクエストを依頼主から受注して儲けたい。

 そのためには、沢山の冒険者に登録してもらって、クエストをこなしてもらいたい。

 報酬と名声で沢山の冒険者を釣り、無茶なクエストに挑戦させたのは、儲けに走った自分達ギルド側にも責任があったとアイリスは思っているのだろう。


 俺は泣いているアイリスの頭に、そっと手を乗せた。


「よしよし」


「ふぇ?」


 赤毛の受付嬢は両肩をビクンとさせ、後ずさった。


「俺も一回目の時は、調子に乗り過ぎて実力に合わない無茶なクエストを受けて、仲間を心配させたもんだ。それでも死ぬことは無かったのは運が良かったからだ。アイリス達ばかりが悪い訳じゃない。俺達、冒険者も悪かった。お互い様だ」


「アオイさん……」 


 アイリスのブラウンの瞳がボーっと俺のことを見てる。


 おいおい、惚れんじゃねーぞ。


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る