第8話 使い魔

「こいつは俺のペットだ! 大事な家族だ!」


 俺は豆柴をギュッと抱きしめた。

 相変わらずモフモフ、フワフワで気持ちいい。


「可愛いけどモンスターだ! 駆除せねばならん! 渡せ!」


「嫌だ!」


「キャンキャン!」


 豆柴は俺の手をするりと抜け、先輩の懐に飛び込んだ。


「おっ、このモンスターめ! やるか!」


「クゥ~ン、クフゥ~ン」


 豆柴は先輩の胸に自分の頬を当てた。

 頬ずりし始める。


「おお~」


 先輩はうっとりとした表情になった。


「こら! 先輩に何をする!」


 後輩が豆柴に手を掛ける。

 だが、


「ダメだ! お前にはこいつは渡せん!」


 先輩は後輩を怒鳴りつけた。


「ハッ、ハッ、ハッ……」


 豆柴は先輩の腕の中で舌を出し、後輩のことを見つめていた。


「んっ……むむ……かわ……可愛いくな……可愛いっ!」


 後輩は豆柴の頭と首を両手で撫でまわした。


「クウウウン」


 豆柴もご機嫌だ。


「そろそろ返して下さい!」


 豆柴が気に入れられたみたいだ。



 よし。これで通してくれるだろ。


 豆柴は先輩の手から飛び出し、俺の腕の中に飛び込んだ。


「豆柴~、離れたくないよ~」

「先輩、ペットと別れる時ってこんな気持ちなんですね」


 お前らのペットじゃないし。

 俺のだし。


「おい、お前、こいつを大切に使役するんだぞ」


「使役?」


「お前、見てないのか、豆柴の頭に★マークが浮かんでるのを」


「あ!?」


「こいつはお前の使い魔になったってことだ。気に入られたんだよお前は」


「ハッハッハッ……ワウン」


「そっか~、お前。一緒に戦ってくれるか!」


「ワン!」


 今までで一番元気な返事。


 俺は嬉しくなった。


「まったく、俺が使役したいくらいだよ」


 先輩は名残惜しそうに呟いた。


 先輩と後輩は道を開けた。


「行くぞ!」


 そして、俺は新たな仲間を得て、次の一歩を踏み出した。


つづく

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