第66話 決勝戦:火と山の戦い-2
何をされたのか。
自分は今、右半身を失い、即死レベルの攻撃を受けたはずだ。
探索者となって一般人とは比べられないくらいには丈夫になったのは理解している。
けれど、流石に今のは無理だ。
死という絶対的な運命からは逃れられない。
それがどういう訳か無事だ。
いや、無事ではない。損傷が刹那の時間に回復した。回復?回復ってなんだっけ?あれは回復なんかじゃない。
黒鬼と彼、不動さんとの戦いで見た。
傷を負った探索者達を一瞬で回復させたあの時、回復ではなく、まるで時間が、彼らの体が巻き戻った感覚。
理解不能なその神の如き御業に俺は戦慄し、心を奪われた。
実際に自分の身に起きるとは思ってもいなかったが。
思考が現実に戻る。
「何を呆けている。まだお前は俺に可能性を示さなければならない。来たるべき時のために。」
「来たるべき時…。それは一体…。」
「………構えろ。本気を見せろ。そして限界を超えて見せろ。」
「わかりました。今の限界を超えて見せます!!」
火神は第二次元の炎神憑依を再度行う。
炎神の力の一部を使う為に己の身を依代とする第二次元:憑依。
神の力をほんの一部とは言え使うこの力は、人の身にはかなりの負担がかかる。
長時間使えないのは重々承知。
何とか制御しているが、会得して時間も経験も少ない。
「行きます。炎神武技『
火神は宙へと跳躍し、地にいる不動に向けて、神炎を付与した十字の斬撃を放つ。
煌めく炎が不動へと迫る。
「鬼神剣『
不動は刀剣を横に一閃。
漆黒の魔力を纏う斬撃が神炎を暴れ喰らう。
火神の本気の武技は、崩れ落ち、喰らい尽くされた。
「何ですかその業。見たことも聞いたこともない。」
震える体を必死に堪え、不動へと疑問を投げかける。
「ただの斬撃だ。この程度の業で一々驚くな。」
火神は笑みを浮かべる。
この人の様になりたい。そう強く思った。
限界を超えて見せろ。
と彼は言った。まるで自分の事が必要だと言わんばかりに。
彼でも不可能な事があるかのようで、彼の力になりたいと思った。
「限界を超えます。」
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ユニークスキル
『
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「え?」
突然、ユニークスキルを取得した。
彼の力になりたいと強く願ったら……。
「ふっ。お前の想いに応えてやった。」
彼は笑みを浮かべ、意味ありげな言葉を紡ぐ。
「『限界突破』スキル発動。」
その瞬間、体から本気の時の2倍はあろうかという程の力が込み上げてくる。
見ていてください。
「炎神武技『
白く輝く神の焔が太陽の如き、円の塊となる。自身をも焼き尽くしそうな程の灼熱。
限界を超えた一撃に火神は武者震いの様な感覚に陥った。
「それでいい。」
彼は一言呟くと、刀剣に手をかけ、残像すら見えない程の速度で刀剣を振るったのだろう。
俺の渾身の一撃を消滅させ、その斬撃の余波が俺を切り裂いた。
AI審判による判定が行われ、勝者、阿空不動のコールが響き、彼の優勝が確定した。
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