第56話 二回戦開始
二回戦の1組目は、鹿羽サイモンと火神灰人となる。
二人は互いに国家戦力級探索者であり、当然ながら面識もある。
「灰ちゃん、今日は負けないよ。この間は君の火炎にやられちゃったけど、今日は本気の本気の僕のスキルを見せてあげる。」
ニコニコとしながらも、火神への挑発は忘れないサイモン。
「サイモンさん、あなたの水翼は本当に俺のスキルとは相性が悪いですからね。この間も紙一重の差でしたし。」
「ははは。そんなこと言って油断させようなんて人が悪いなぁ灰ちゃんは。でも本気で倒すから。」
「油断なんて考えてもないですよね。俺の方こそ今日も勝たせて貰いますよ。」
お互いに力を認めているライバル関係の二人。
火と水氷のスキルであるがために、若干火神の分が悪い。
二人は武闘場の中央部へと進み、対決が始まる。
「両者一回戦は強者との死闘で、かなり魔力は消費していますが、その眼は闘志の炎で燃えております。お互いライバル視している熱く、最高の戦いを目に焼き付けろ!!では準備は良いですか!?レディーーーー!ファイッッッ!!!」
サイモンは双剣を構え、剣の全体を魔力で覆う。
そして、自身に魔力を纏い、身体強化スキルを発動し、人間を辞めた速度で火神へと斬り込む。
その斬り込みを火神は難なく剣で受け止める。
「ふふ。やっぱり流石ですね。」
「いやいや、簡単に受け止めておいてよく言う。」
お互いに口元をニヤつかせながら、競り合う。
「さて戦いを長引かせても国民も客も喜ばないですからね。サイモンさん、本気のユニークスキルを見せてください。俺も本気で行きます。」
「いいね灰ちゃん。気合い入れていくよ。」
そう言うとお互いにユニークスキルを発動させる。
火神は炎化し、サイモンは水翼を展開する。
炎の化身と水氷の翼が生えた悪魔が武闘場へと降り立つ。
「いくぜ灰ちゃん。」
サイモンは水翼を大きく羽ばたかせると空へと飛び立つ。
空を飛びながら、氷の羽をまるで弾丸の様に火神へと撃ち込む。
炎化した火神の体に触れると同時に蒸発し、水蒸気へと変わる。
「やっぱり様子見では戦いにはならんな。」
サイモンは、空中に5メートル程の氷の槍を生成する。
その槍は高速で回転しながら、弾丸ほどの速度で火神へと撃ち込まれた。
火神は自身の火力を爆発的に上げ、氷槍を溶かし尽くした。
「サイモンさん、ガチですね。けどまだまだこんなもんじゃないですよね?」
サイモンは辺り一面に氷の羽を生成する。
その規模は空を覆い尽くし、万を超える。
「灰ちゃん行くよ。」
全ての氷の羽が高速スピンし、先程とは違い1つ1つに魔力を纏わせている。
「凄いな。」
素直に驚愕する火神。
「武技『
炎化した状態で、剣にも炎を纏わせて振るう。
大きく振るった剣から炎の柱が立ち、やがて柱は鳳凰となり、天へと昇っていく。
かなりの数の氷の羽が天へと昇っていく火の鳥に燃やし尽くされる。
しかし、その間の隙をサイモンは狙っていた。
氷は囮、本命は双剣に纏わせた水の魔力。
サイモンは双剣を振るい、五つの十文字の水刃が翔び、火神を襲う。
この水刃に、サイモンはありったけの闘気と魔力を込めた。
「武技『
火神は思わぬ攻撃に焦るも、自身が使える最高レベルの魔法で迎え撃つ。
「火属性絶級魔法『
火焔で創造された凶獣は、大きな口を開け、水刃を噛み砕いた。
そのままサイモンへと食らいつき、全身を焼き尽くす。
審判AIが試合終了の合図を鳴らし、勝者火神灰人に決まる。
ぜぇぜぇと肩で息をしながら、武闘場の外へと弾き出されたサイモンの様子を伺い安堵する。
「サイモンさん、強かったです。またやりましょう。」
その言葉を皮切りに会場は大きく沸いた。
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