第53話 不動VS日本2位の男

 日本でランキングトップは勿論、阿空不動その人だが、不動の次席となるのはこの男。


薔薇崎ばらさきルイ』。


 超絶ナルシストだが実力はハンターズギルドのお墨付き。


 常に両脇には綺麗な女性が一緒に居る。

 全男性の敵であるが故に、男性探索者からは嫌われているが、実力がある為、手出しはされない。されても返り討ちにする事が日常だ。


 「いよいよですね藤堂さん。世界1位の男と日本では阿空探索者を除けば1位の男の対決です。」


 「えぇ。正直どうなるか私には分かりません。薔薇崎探索者の実力は私も把握していますが、かなり強いです。何せ日本では最強の名を欲しいままにして来ましたから。」


 「ですね。しかし、相手は世界1位の男。ネットでは闘神と呼ばれています。最近では、赤龍や黒鬼を倒していますから。この2体は国家戦力級探索者が束になっても手も足も出ませんでした。はぁ、楽しみです。」


 これから先、行われる戦いに実況や解説も含め、全視聴者や一般客も固唾を飲んで見守る。一瞬足りとも目が離せない。


そんな雰囲気が会場を包んでいる。


 女の子を両脇に置いて、向かってくる薔薇崎。


 「アンタがランキング1位の人?俺っちは薔薇崎ルイ。アンタを超える男だよ。今はまだランキング19位だけど、いずれ超えちゃうから。」


 「そうか。頑張れよ。」


 少したりとも目を合わせない。

まるで興味が無く、薔薇崎の存在を否定するかの様な態度にプライドを傷つけられ、顔を真っ赤にする。

 

 「ふ、ふーん。今から俺っちの力を見せてあげる。その興味なさげな顔をギタギタにしてあげるから。」


 「そうか。頑張れよ。」


 不動はそういうと武器も持たずに武闘場へと上がっていく。


 「武器も持たずに舐めやがって。」


 薔薇崎は両脇の女性を下がらせ、剣を装備し武闘場へと上がる。

 顔には怒りのあまり血管が浮き出ている。


 「では8回戦、ランキング1位、阿空不動探索者とランキング19位、薔薇崎ルイ探索者の対戦を始めます。準備はいいですか!!レディーー、ファイッ!!!」


 先ず動いたのは薔薇崎。

『身体強化』スキルでパワーとスピードを強化する。その練度は不動には遠く及ばないもののかなり高レベル。


 『剣聖』スキルで剣術を強化し、その斬撃は並の探索者やモンスターなら用意に細切れになる。


 「取った!!」


 不動の頭へと斬撃を放つも、薔薇崎の剣は不動の素手で簡単に掴まれた。


 「な、に、これ。全然動かないんだけど。離せ!!」


 不動は無表情で剣を離すと、薔薇崎はすぐさま距離を取る。


 「少しはやる様だね。じゃあこれはどうかな?」


 薔薇崎は『速度強化』、『腕力強化』などのあらゆるバフを自身にかける。


 ステータス値は軒並み通常時の2倍に膨れ上がる。

 

 「更にここからユニークスキルを二つ発動する。」


 ユニークスキル『剣王乱舞ケンオウランブ』。


 ユニークスキル『闘気覚醒トウキカクセイ』。


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『剣王乱舞』

・刀剣支配系スキル。

刀剣の扱い、支配力、物理攻撃に補正がかかる。


『闘気覚醒』

・闘気操作系スキル。

闘気を爆発させ、身体能力を倍化させる。他スキルと重複可能。


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 闘気覚醒により、ステータス値が通常時の4倍となる。これだけでもランキング10位以内のステータス値になるだろう。


 更に剣王乱舞というスキルで、物理攻撃に補正がかかり、補正値は50%上昇。


 剣技も剣王の名は伊達ではなく、世界屈指の剣術家となる。


 「今までこのスキルを使用して負けた事ないのよ俺っち。行くよ1位!!」


 一瞬で不動の側へと接近し、剣技を使う。

あまりの速さに残像が6つも見える。


 それぞれにフェイントを混ぜており、虚実の境目が分からない。


 虚が実に、実が虚となる。


 不動はその場で一歩も動く事もなく、全ての剣筋を捉える。


 右手の人差し指と中指を伸ばし、手刀にする。


 精密な魔力操作により、濃度のかなり濃い魔力層が指を覆う。


 剣を全て手刀で弾き、そのまま薔薇崎の胸へと指を突き刺す。


 「ぐっ。痛ぇ。」


 すぐに距離を取る薔薇崎。


 胸からは血が溢れるが、その後も幾度と無く攻めるもまるで通じない。


 薔薇崎は根気よく攻撃を繰り返す。


 しかししばらく攻撃を続けるも、渾身のユニークスキルも全く不動には通じないのが理解でき、戦闘意欲が掻き消え、巨大な自己愛が恐怖へと染まる。


 「か、勝てるわけねぇよ!!こんな化け物に。俺っちのひ、必殺スキルをあんなに簡単に、しかも素手でなんてあ、ありえねぇ!!助けてくれサエちゃん!なぁ!助けてくれエリちゃん!!」


 絶望色に染まり、愛する女へと助けを求める。


 薔薇崎はゆっくりと震えながら不動の眼を覗く。


 自分への興味はなく、ただ作業的に自分の相手をした事に気がついた。


 深淵の様な瞳に修羅を見た。


 「そろそろ終わるぞ。」


 不動は手刀を目にも止まらぬ速さで動かす。


 





















 薔薇崎の全身は無数に細切れになり、血を噴き、肉の欠片となった。


 会場はあまりのグロさに嘔吐する者、身震いする者、涙を流す者、気絶する者、様々な反応を見せるが無惨にも戦闘の終わりを告げる審判AIによる勝利者コールが静寂と混沌の中、響き渡った。


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