第44話 日本支部へのケジメ-3

 柴田翔は阿空家へと向かう為、マンションの住民をナイフで脅し、オートロックドアを開けさせた。


 「ご苦労さん。」


 ゴンッという鈍い音が首筋から聞こえた。

用がなくなった住民を手刀で気絶させた。


 そのままその住民のカードキーを盗み取り、エレベーターのセキュリティを解除した。


 「楽勝。このままサクッと奴を殺して得た大金で女を買って毎日豪遊してやる。」


 絶対に来ない未来を夢見て、阿空家の玄関へと着いた。


 呼び鈴を鳴らし、手を後ろに隠し、ナイフを持つ。勿論、猛毒スキル発動。


 先程の件で妹の詩秋には念の為、出てこないように不動が言いつけている。

 不動本人が玄関のドアを開ける。


 「ハロー。では死んでくれぇえええ。」


 翔は不動に向かってナイフを突き刺す。


 「くけけけ。殺った。雑魚がぁああ。これで大金ゲットぉ。ふひひひ楽勝ぉお。お?」


 刺さったはずのナイフは根元からへし折れる。


 不動の体を刺すにはナイフの強度が足りない。


 頼みの綱である猛毒スキルも不動のユニークスキル、魂魄結界により状態異常は全て無効。


 「何してんだ?こんなオモチャで。」


 「ぐっ。オモチャ…。猛毒スキルは発動してるのに何で効かない!!!」


 焦る翔は上着の内側に仕込んだ小太刀のような暗器を取り出す。


 「死ねぇえええ。猛毒スキルぅうう発動ぉお!!」


 必死にスキルを発動し、危機迫った顔で攻撃する。


 「そんなもの効くわけねぇだろ。遊びなら家でやれ馬鹿が。」


 不動の体に小太刀の様な暗器は刺さりもしず、猛毒スキルも効果がない。


 「そんな馬鹿な。何かの間違いだ。俺がこの俺がこんなガキに。」


 今まで弱い者のみを狙ってきたツケが回ってきた。圧倒的な力を前にこれから地獄を見ることとなる。


 「さっきのデカブツの兄貴か。確か翔って言ったか?まぁ覚える気はないからすぐに忘れるが、お前は今までの罪を償わなければならない。」


 不動は怠惰催眠で、装備や武器を剥ぎ取る。そのまま近くのダンジョンへと向かわせる。飲み食いは出来ず、ひたすらに最下層へと無防備で攻略する様に洗脳した。


 「い、行ってく、く、く、るるるるる。最下層最下層素手で最下層最下層最下層最下層ダンジョンダンジョン最下層ダンジョンダンジョンダンジョン……。」


 虚な眼をし、1人ダンジョンへと向かう男を人々は目にしたという。

 ハンターギルドのギルド員が懸命に止めようとするも洗脳により脳のリミッターが外れた探索者を止められる筈もない。

 ひたすらブツブツと呟きながら下層へと向かって行った。


          ✳︎


ハンターギルド日本支部。


 幹部室にて服部副支部長が貧乏ゆすりをしながら報告を待っていた。


 「遅い…何をしてるんだ奴らは。だから探索者など使えんのだ。こんな事なら私が直々に行けば良かった。副支部長たる私の言うことなら探索者如き言う事を聞かざるを得んのだ。」


 「ですね。探索者など僕達が居ないと素材の流通も利用も出来ない。誰のお陰で生活が成り立っているのか考えもしない馬鹿ばかり。力だけが取り柄のウドの大木とは彼等の事を言うんでしょうね。」


 「だな。我々に感謝して、我々の言う事に黙って従えば良いのだ。」


 「小物だな。ハンターギルドはここまで腐っているのか。これなら組織ごと消えた方がマシだな。」


 「だ、誰だ!!お前は!?それに小物だとぉ!!」


 「よぉ。お前が服部副支部長か。俺と俺の家族に手を出そうとしたのは。」


 「な、なんだと!!そんなもの私は知らん。それにもしそうだったとして探索者であるお前は私の言う事を聞かなければならないだろう。」


 「なぜだ?俺はお前らに世話になってもいない。それにお前如きに命令されるなんて人類の恥以外の何ものでもないだろ。」


 「服部副支部長に従え探索者ぁ!!」


 「誰だお前。」


 「は?覚えていないのか?お前に俺は恥をかかされたんだぞ!!」


 「一々、虫ケラの事をお前は覚えているのか?」


 「む、虫ケラだと!?」


 「それ以外何がある。探索者が命を賭けて取ってきた素材を何の代償も無く得て、自分は安全な場所で踏ん反り返る。そんな存在を寄生虫、いや虫ケラと呼んで何が悪い。」


 「探索者は我々が素材を売買する事でしか金を手に出来ないではないか。」


 「は?それはお前らもだろ?社会は1人じゃ成り立たないのはガキでも分かるだろ。もういい。お前らに何を言っても労力の無駄だ。」


 不動は怠惰催眠で2人に洗脳をかけた。

内容は、2人の貯金を児童養護施設に寄付し、職を辞すること。その後、探索者となりダンジョンへと攻略に行く事。洗脳が解ける事は未来永劫ない。


 「「わかりました。だんだんじょん。おくおおく奥お奥。」」


 またまた、虚な目をした2人の生ける屍がダンジョンの奥へと向かうのであった。

 









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