図書館にいたら急にタイムスリップしたけど紆余曲折あり、大名になったんだけど!!

三十六計逃げるに如かず

第1章 箕輪城と長野親子

第1話 『武経七書』と図書館

 俺は、竹田一郎。箕輪第一高等学校に進学する高校三年生だ。受験が近づいているというのに俺は勉強など投げ捨てて、毎日、市の図書館で好きな本を読んでいる。当然、模試の点数など1桁の科目もある。

 

 ある日、俺は自分で言うのもなんだが珍しく世界史の授業に参加していた。この日の授業の内容は「古代中国の古典文明」についてだった。授業の中では、漢字二文字の中国人がたくさん出てきた。やっぱり、出るんじゃなかったと思っていた。その後も授業は続いた。授業の最後10分ほどで、教師が


「皆は、『風林火山』って、知ってるか?どうだ、数人知っているな。そう、これは今日、授業にも出てきた『孫氏』の一節から取られたものなんだ。」


その後も、教師の話は続き、終鈴のチャイムが鳴った。クラスメイトが後ろを向いて友達と話したり、立ち歩いている中、俺はすぐに荷物をまとめて学校を飛び出した。途中、


「お〜い。どこに行く?まだ、終礼が残ってるぞ。」

「ちょっと、具合が悪くて。。。すいません。」

「おい、ちょっと待てよ。ったく、すぐ居なくなりやがって。」


 俺はすぐに自転車を出した。勿論、図書館に向けてだ。運動不足の俺には少々きつかった。しかし、中に入ると、涼しく冷房が効いており、外の地獄のような気温を忘れてしまうようだった。俺は今日ここに、ラノベを読みに来たわけじゃねぇ。俺は、いつもとは逆にある歴史の本がおいてある棚に向かった。そう、今日は急に「孫氏」が読みたくなった。やはり、ここには誰も来ないのか、本を手に取るとホコリが舞った。


俺は、ネットで「孫氏」を含む、武経七書があるということ調べた。そして、7冊を自習スペースに持っていき読んだ。


 閉館の時間のチャイムが鳴った。周りの人も少しずつ己の、作業を中断し、帰り支度に入っていた。結局、1冊も読み切ることができなかったので、本を借りて家で読もうを思い、支度をした。


「これ、お願いします。」

「はい。」


ピッ、ピッと電子音が鳴る。


「はい。ありがとうございました。」


俺は会釈して、立ち去ろうとした。しかし、自転車の鍵を忘れていたことに気づき、急いで引き換えした。無事、鍵は元の場所にあった。館内の電気が消えていったため、俺は焦った。しかし、真っ暗になっていたため、本棚にぶつかってしまった。そして、倒れたときにちゃんと防がなかったため、そのまま転んでしまった。


 どれほど、時間が経っただろう。当然、周りは真っ暗だった。まだ、館内に人が居ないか、確かめるために歩きまわったが、所々自分の記憶とは違う構造になっている場所があった。すると、向こうから明かりが見えたため、走り寄った。


「すいません。出遅れてしまったんですが、ドアを開けていただけますか?」


すると、そこに居たのは、甲冑をまとい陣笠を頭につけるおじさんの姿があった。俺は一瞬、戦国時代の霊かと思った。すると、そのおじさんが叫び仲間を呼んだ。


「武田の間者だ!」

「えっ、ちょっとまってください!」


すると、すぐに男と同じ姿をした、男が寄ってきた。俺は必死に抵抗したが、男4人の力には、歯向かえず、縄でしばられた。その時、もう少し運動しておけばよかったと一瞬思った。おっさん達が、なにか小声で話していたが、俺には筒抜けだった。


「武田の間者にしては弱すぎじゃねぇか。」

「まぁ、これで褒美をたんまり貰えるだろうな。」


 しばらく、歩かされて俺は立派な屋敷のような建物に連れてこられた。中に入ると、明らかに偉そうな人がいる広間まで連れて行かれた。そこには、白髪、白髭を蓄えている老人と、他にも家来らしき人が4人いた。


「長野業正様、武田の間者と思われる者を三の丸で捕らえました。」


三の丸って言うことは城の中にいるって言うことか。でも何で、城の中にいるんだ?


「どういたしましょう。」

「話を聞く。お主らは下がって良いぞ。」

「はっ。」


そして、広間には2人だけとなった。


「して、お主は何故にここ箕輪城に潜った。」


箕輪城?たしかあそこにはなにも残っていないはずだ。ドッキリだ。そうだ、よくある手のやつだ。


「あの。」

「なんじゃ。」

「ドッキリということはわかったのですが、親も心配していると思いますので、帰してくれませんか。」

「返すだと!なぜ、間者をみすみす返せようか!」

「じゃあ、どんなリアクションを取れば良いんですか。」

「何を言う。して、お主。その、背負っている、袋には何が入っている。」

「あぁ、孫氏です。」

「なに、『孫氏』だと。なぜ、間者が孫氏などを持ち歩いているのだ。」

「今日、借りたんです。」

「そうか。正勝捕らえておけ。殺めるでないぞ。」


そう言うと、1人の男性が入ってきた。


「はっ。」


どうやら、事は済み、俺は帰してもらえると思った。しかし、その後俺は、暗い部屋に入れられた。


「ちょっと、これはやりすぎじゃないですか。人権問題ですよ。」

「なにを先程から申しておるのだ。間者をみすみす主人のもとに帰す者がおるか。」

「えっ。。。俺もしかして拉致された。。。」

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