第156話

強制回収したスキルと称号は・・・


・作法(反転)

・儀礼(反転)

・行儀(反転)

・礼儀(反転)

・話術(反転)

・躾 (反転)

・貞淑(反転)


・称号 見栄っ張り

・称号 大風呂敷

・称号 尻軽女

・称号 法螺吹き

・称号 放蕩者

・称号 無駄飯喰らい

・称号 道楽者

・称号 獅子の思い上がり

・称号 蛇のやきもち

・称号 猿の怒り

・称号 熊の惰眠

・称号 狐の独り占め

・称号 豚の食い意地

・称号 蠍の交尾

・称号 殺人者

・称号 同族殺し

・称号 人喰い


・・・何だ?これ?

他にも剣技とか槍技もあるんだが、そんな普通のスキルとは一線を画すスキルや称号が大量にあった。

二十八名が少なくとも三つ、多ければ四つの称号を持っていて、同じ称号を持った者が複数いた。

そのどれもが、良い、とは言えない称号のようだった。

「ようだった」と言うのは、称号を鑑定はできなかったからだ。

〈スキル鑑定スキル〉の名前通りに、スキルは鑑定できたが称号は無理だった。

これについては諦めるしか方法が無かった。


その称号の中でも、生物の名前が付いた称号が違和感があって気になった。

例えば〈獅子の思い上がり〉獅子と言えば動物の中で強い部類である、その強さに思い上がっていると言う意味だと思うが・・・事実として強いのだから、この場合はでは無くではないか?と思う。

それを敢えてと称する意味に、俺では何か言葉にできないの様な物を感じた。

それは他の生物の名前を使った称号も同じである。

何と言うか、この手の生物の名前が付いた称号は、その称号の先を知りたくないと言うか、知ってはいけない、そんな気がするのだった。


最後の三つの称号が犯罪者だった証拠なんだろうな。

殺人者は、全員が持っていたのだろう二十八個存在した。

間違い無く、これが犯罪者だと断じられた証拠だろうと思う。


しかし、それでは納得できないのが次の称号だった。

同族殺し・・・これは十二名が持っていた。

これが全員に無いと言うことは、俺の推測が間違っていたと言うことになる。

予想が間違ったことに思うところは無い。

元々が情報の無い中で推測した内容であり、間違う可能性は充分にあると思っていたからだ。

たぶん、何か殺人者と同族殺しを分ける基準が存在するのだろう。

それは神の領分であって、人が関与するべき物では無いのだろう。


あとは、人喰いだな。

「人を食い物にした」と聞くことがあると思うが、それではないかと思いたいのだ。

まかり間違っても、実際に人を食べたのでは無いと思いたい。

あくまでも俺の願望であって、実際のところは分からないが・・・


称号以外に気になるのは(反転)が付いたスキルだ。

鑑定した結果は、スキルを反転して逆の効果にするようだ。

つまり、〈作法〉を反転すると〈無作法〉になるってことである。


はっきり言って、使い道の無い無駄なスキルだと思う。

あるだけで人間性が変わってしまいそうな、悪意のあるスキル、こんな物を見たのは初めてだ。

とても、俺が持っていて使い道があるようには思えなかった。



逆に〈導く者〉が強制的に回収した理由が分かる気もする。

これは世に無くて良いスキルだと本能的に理解できる。


しかし、神様は何だってこんなスキルを作ったんだ?

称号は分かる。

これは、その者の称号、つまりその称号を与えられるような生活を送ってきたと言うことだからだ。

人間には、どうしようもないクズがいると言うことの証明みたいで不快にはなるが、それが真実であることも知ってる。

だから争いが無くならないと言うこともだ。


だが、スキルについては納得ができない。

道具は使い方次第で人を殺すこともできるのと同じように、スキルも使い方次第で良いことにも悪いことにも使えるのだ。

それに(反転)を付ける意味が分からない。

最初から、そういうスキルを授ければ良いだけだと思うのだ。

だから、何故(反転)したのかが分からない。


俺は、この(反転)に悪意を感じてしまう。

神様では無い何者か?

神の力に干渉できるほどの力を持つ者?

いや、そうか!もしかしたら〈神の宝具〉かもしれない!

ビュルギャに使われた物もあったんだから、別の宝具が存在してる可能性もあるってことだ。

そう考えるなら、スキル自体を反転するのでは無く、(反転)を追加で付与できる〈神の宝具〉が存在すると言うことになる。


あぁ~、面倒事だぁ。

間違い無く、今までで特大級の面倒事だぁ。

何でこう俺は面倒事に巻き込まれるんだよ!

こんなの必要無いんだって!

本当に勘弁してくれよっ!

・・・とほほほ・・・


・・・どっちにしても、この(反転)されたスキルも称号も、今の俺には無用の長物だ。

確実に封印指定だな!


もっとこう生産職に役立ちそうなスキルだったら嬉しいのに・・・


そこで、ふっと思う。

俺、魔王城の城下町を目指してたけど、行かない方が良いんじゃないんだろうか?

行くと問答無用で面倒事に巻き込まれそうな気がしてきたぞ。

俺の予想通りだと、この魔国には何かヤバイことが起きてる気がするのだ。


変異種の進化個体、大暴走、従魔の誘拐、旧貴族の企み、旧貴族らしき盗賊?、おかしなスキルと称号。


この国に入ってから起きたことを列挙するだけでコレである。

それも、短期間で俺が遭遇しただけでだ。

こんなの絶対に普通じゃない!


有り得ないほどの問題発生状況に、ゾゾゾッ!っと何か背筋が寒くなってきた。


朝になったらアンバー達と、魔国を離れて他の国に行くことを視野に入れて相談してみよう。

うんっ!そうしよう!

何が何でも絶対に説得するぞ!



「えー嫌よぉ。行きましょうよ、魔王城」

「でも、言っただろ、嫌な予感がするってが言ってるんだぞ!」

「う~ん、確かにエドガーの勘は当たるから、無視はできないんだけど・・・でも、今までも何とかできてたじゃない?」

「それは運が良かっただけかもしれないだろ!無理に危険があるかもしれない場所に行く必要は無いと思わないか?」

朝からアンバーと、こんな問答を続けていた。

そろそろ、ここを出発しておかないと、回収部隊とかち合いそうだし、一端問答は打ち切る。


「そろそろ移動をしよう。折角アンバーが届けてくれた手紙の意味が無くなるからな」

「あっ!そうね、そろそろ離れた方が良さそうだわ」

俺より広範囲に索敵できるアンバーが何かを認識してるってことは、回収部隊が近付いてるってことだろう。

なら、急ぐべきだ。


人質だった商人やその護衛に声を掛け、事前に伝えていた通り出発することを告げる。

ついでにセイランから、この盗賊?達を回収に来る部隊が、それほど時間を置かずに到着するだろうと言って安心させた。


全員から礼を言われながら足早にその場を離れ、更に人目が無くなった所でアンバーに乗って高速で移動をした。

半日ほど直進した所で街道に出る。

この街道を東に進めば白雲城に、逆に西に進めば、いくつかの街を経由して国境に辿り着ける。

つまり、ここで左右どちらに進むかを決めなければならない訳だ。


「さて、俺は左の国境に向かう方向に行きたいんだが?アンバーはどっちだ?」

「私?私は北ね!」

「へっ!北?北に向かう街道は無いけど?」

「何を言ってるの?北の方に海があるでしょ。その辺りには漁村があるはずよ!そこで新鮮な魚が食べたいわ!」

・・・食欲全開だった訳か・・・

まあ、そこで説得すれば良いかな。

沢山食べて、満足してくれれば、俺の話に賛同してくれるかもしれないしな。


「はいはい、分かった分かった。じゃあ、新鮮な魚介を探しに行こうか」

「ええ!行くわよ。しっかり掴まっててね!」



アンバーの背中に乗って、俺は走り出す彼女にしがみ付いた。

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