第145話
「貴重な情報、ありがとう。遅くなったけど、俺はエドガー、この子がアンバーで、こっちの子がニジだ」
「どういたしまして。私はファルエット、この子はメラクよ」
お互いに自己紹介をした後で店に入った。
まあ、表で何時までも話し込んでても邪魔だって言われそうだったしな。
彼女はメラクの足に付ける足輪が古くなって擦り切れてきたので探しに来たらしい。
ちなみに、メラクは風属性持ちのウィンド・ペレグリンと言う魔物だ。
ファルコンの亜種とか呼ばれてたこともあったが、鳥類的には近縁種の扱いになってると生物学師が脳内に情報を開示してる。
そのペレグリンって鳥の魔物ってことだ。
確か風属性がある鳥系の魔物なら、翼に風魔法を纏って攻撃したり、風魔法で飛ぶ速度を上げたりできたはずだ。
体色は通常の色合いだし体長も基準体型なので、変異種では無く通常種だろう。
鳥系の従魔は前から目印を付けることを推奨されてた。
確か理由は、従魔師と離れる可能性が高いので、他の冒険者に狙われないように、だったかな?
俺の探してるのは、勿論アンバーとニジの目印になる物だ。
だが、ただ目印になるだけではダメで、できれば無限庫が使えるように小さくても入れ物のようになった物が望ましい。
前々から、アンバーに収納系の能力が欲しいと言われていたが、収納や保存庫、無限庫も元になる入れ物が必要だった。
猫が何かしらの入れ物を持ってるってのは変に見えるし、身体の大きさを変えられるアンバーに持たせられるような入れ物も無かった。
そんな理由で諦めてたんだが、今はその問題が解決するかもしれないって訳だ。
彼女に聞いていたので、付与で体にくっ付く物を探して店内を見て回る。
首輪だけでも小さな物から大きな物、特大のやつなど俺の頭がすっぽり入りそうな物まであった。
色も、カラフルな物からシンプルな物まで色々で、見てるだけでも面白い。
そんな中、店内の奥の方にアクセサリーが飾られたガラス製のケースを発見した。
近付いて見ると、確かにアクセサリーが飾られている。
一度だけエスクラさんとキャスリーンさんに引き摺られて入店した宝飾店で見たのよりは、大人しくて可愛らしいシンプルなアクセサリーだな。
これなら、アンバーやニジが付けられる物が見付かるかもしれない。
ただ、入れ物状になった物があるかな?
「何かお探しかしら?」
ガラスケースの反対側から、店員らしい女性に問い掛けられた。
「ええ、あちらのファルエットさんから魔力でくっ付くアクセサリーがあると聞いたので、この子達に目印のアクセサリーをと思って。ただ、入れ物になってるようなのが無いかなと探してました」
「・・・確かに、その子には目印が必要ね。でも、入れ物?アクセサリーなのに?」
ニジを見てるってことは、彼女も大暴走のことを知ってるみたいだな。
にしても、入れ物っておかしいんだろうか?
「ええ、誰の従魔か分かるようなメモを入れて置くとかできればと」
「えっ!従魔誘拐の対策なのかしら?」
何それ?誘拐?
「えっと、その従魔誘拐って?言葉からすると、他人の従魔を誘拐する者がいるってことですか?」
「あら?その通りだけど知らなかったの?元々魔族は寿命が長いから、従魔師も他の種族と比べて多いのよ。その従魔を狙った誘拐が起きてるらしくて、従魔向けの商品を取り扱う店にも通達が回ってるの。でもそうね、登録した人しか開けられないアクセサリーに従魔の主人のメモを入れておけば、誘拐したヤツラに一泡吹かせられそうね」
何のためにやってんだか?従魔が従魔師以外の命令とか聞く訳無いのに。
・・・従魔に命令できない・・・でも誘拐する・・・命令できない・・・誘拐・・・殺して・・・素材・・・
胸糞悪い事件っぽいな!
『アンバー、ニジ、どうやらかなりの馬鹿がいるみたいだぞ。手を出されない限り、
『そうだね!許可してないのに触られるとか「マジ、死ねば!」よ!』
『・・・ニジ・・・主・・・一人・・・他・・・いらない・・・邪魔・・・死ね・・・』
うわぉ!二人とも怖いぞ!
『関係無い人は傷付けちゃあダメだぞ!』
『分かってるわ』
『・・・了・・・』
それにしても、主人以外開けられないアクセサリーって、魔力認証式だろ?
何だか、大袈裟なアクセサリーになりそうだぞ・・・
「最初の目的は、従魔であることの目印としてで、入れ物ってのは後で考えただけなんです」
「そうなの。入れ物って言うと大きさは?小さくて良いのかしら?」
「そうですね。メモが一枚入れれて、見ただけでは入れ物だって分からないのが良いです」
「今、そう言うのは置いてないけど特注する?好みの物を作ってあげることもできるわよ」
へー、そういうのもやってくれるんだな。
これは注文した方が良さそうだ。
「基本は、こんな感じの外見で・・・」
そんな感じに、俺が思ってるアクセサリーの形を説明していく。
勿論、俺に外見的なセンスなんて無いから、そこはプロにお任せだ。
俺が話してるのは、あくまでも基本となる形だけである。
「うん、だいたい分かったわ。大きくも無いし宝石も付けないから、そんなに時間は掛から無いわ。そうね明後日の午後には用意できると思うわよ」
「明後日か、分かった。午前はギルドに行く用があるけど、午後は空いてるから大丈夫だ」
注文も終わり店を出ようと思えば、何故かファルエットさんが俺を待っていた。
「どうだった?良い物はあった?」
「いや、思ったような物が無くてね。特注してくれるって言うんで注文してきたんだ」
「そうなのね。それはまた、高価な買い物をしたわね」
「えっ!高価って、そんなに高いのか?飾ってあったのは銀貨十枚もしてなかったんだが」
ここ、そんなボッタクリな店だったのか?
「だって、あなたが注文してた
「マジッ?」
「マジマジ!」
ウソッ!ヤバイ
うわっ!飾ってあるのを基準に考えてたけど、金額聞いとくべきだったー!
そんな高額な買い物、武具以外で買ったこと無いぞ!
あんな小さなアクセサリー一個のデザインで金貨十枚とか冗談みたいな金額だし!
だいたい、そんなの言われなかったら分からないだろう!
かぁっー、
・・・って、大丈夫か。
引取り予定日にはギルドから報酬出るし、それ受け取ってからの支払いだし、報酬と買い取り額の合計は絶対金貨千枚超えるからな。
アンバーやニジのためだし、たまには食費以外にも金を使っても良いだろ。
ふぅー、一瞬だけ焦ったな。
いやー、こういうのは確認が大切だってことだな。
良い教訓だった!
次からは気を付けよう。
『ねぇ、エドガー。あんなに高い物頼んで良かったの?』
『・・・高い・・・分からない・・・でも・・・良かった?・・・』
『気にすんな。アンバー欲しがってただろ収納?小さくても入れ物だったら収納能力が付けれるだろ。ニジにもあれば便利だろうし』
『あっ!そういうことっ!』
俺の言ったことが理解できたのか、俺の顔に頭を擦り付けてくるアンバー。
「おいおい、
そんな彼女が『私も次は猫の魔物を探そうかしら?』と考えているなど、俺には与り知らないことだった。
その後、ファルエットさんとは工業区との境になる通りで別れ、そのまま宿屋に向かう。
というか、宿屋に向かう途中に目的の料理屋があるんだ。
丁度良い時間だし、このまま食事をしてから帰ろう。
色々と動き回って腹も減ったし、ギルマスの奢りだから存分に食べてやろう!
『アンバーとニジもしっかり食べて良いからな』
『本当?それは嬉しいかも』
『・・・ニジも・・・食べる・・・』
あっ!見えた!
あそこが店だぞ。
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