第60話
ごめんなさい!
ボコボコにしてやるって言ったけど、無理かも。
気を抜いたら俺がボコボコにされそうだ。
頭が固くて融通の利かない頭の悪い頑固な騎士団長でも、流石は騎士団長だった。
無茶苦茶強いぞ!
既に
最初は様子見しようと積極的に攻めてなかったが、これだけのスキルを使ってても、気を抜くと捌くのが間に合いそうにない。
トップになれるだけの実力は持っているな、特に対人戦闘に強い感じでだが。
さっきから流れるように剣戟が右に左に上に下にと振るわれてる。
それを足を使ってかわし、槍を使って反らしているが、上手い具合に次の攻撃に繋げているせいで、隙ができないのだ。
ただ、無駄に攻撃せずに観察した結果、たぶん攻撃の型があるようだと分かった。
「どうした!大口を叩いていただろう、反撃はできんのか!守るばかりでは俺に勝てはせんぞ!」
『大口をたたいてんのは、どっちだよ!騎士団長って肩書きの癖に俺に一撃も入れれて無いだろうが!』と言ってしまいたい。
だが、今は我慢だ。
さっき女将さんが常連客に薬を頼んでいたのが、視界の端に入っていた。
そいつが戻ってくるまで、ここに警邏兵とかの目を引き付けておく必要がある。
既に周囲に遠巻きに成り行きを見守る警邏兵が四組で八人いるからな。
でも、マジで厳しい状況ではある。
俺は守りに徹しているから体力的には問題無いが、相手は常に攻撃し続けていれば何処かで体力が切れてくるはずなのだ。
それが、全く衰えていない。
無限の体力などありえないんだが、相手を見てると錯覚しそうだな。
俺が相手だという事で、全力は出してないのだろうと予測した。
そろそろ時間的にも良い頃合いかな?
相手の動きにも慣れたし、攻撃のパターンも掴めてきた。
さあて、反撃と行きますか!
まず、右上からの袈裟切りをかわす。
振り切った体勢を見て次の攻撃を予想する。
『あの体勢は横薙ぎだな』
何度も見た技の出始めを潰すように槍を突き出す。
いきなりの反撃に、相手に一瞬の隙が見えた。
ここから形勢逆転だなと気合を入れ、最適化スキルも使う。
このスキルを使えば、槍の穂先がブレたりせずに狙った所に攻撃ができる。
体への負担も少なくなるから、徐々に追い詰めたりするのに最適だ、最適化だけにな。
と、くだらない事を考えながらも攻防は続く。
連続攻撃の最中に技を止められれば、自ずと次の攻撃が出せない。
そうなった時の行動は二つ、前に出るか、後ろに引くか。
さあ、どっちだ?
前に出るか、馬鹿確定だな!
踏み出すために前に出した爪先を槍の石突で払う。
見事に体勢が崩れる。
剣だったら絶対に届かないが、槍なら余裕だ。
これが後ろに引かれていれば、俺が前に出る必要があった。
その時は、どうしても一拍の合間ができ、相手に防御を固める隙を与えるところだった。
それでも流石と思える対応をしてくる。
剣を前に突き出し、俺に牽制してきたのだ。
俺の武器が槍とはいえ、手を伸ばした上に剣を真っ直ぐに突き出されては、踏み込む事はできなかった。
おかげで相手は俺を睨み付けながら、体勢を戻してしまった。
『ちっ!振り出しか』と内心ガッカリする。
「なかなかやるじゃないか!だが、まだまだ俺は本気にもなってないぞ!」
騎士って、戦う前に口上を述べたりするって聞くけど、それって俺からしたら無駄口だと思う。
本気とか、本気じゃないとか言って相手に情報を与えてるって気付かないのか?
何も言わない方が、相手の動揺を誘えたりするのにな。
だから、俺は何も言わないぞ。
馬鹿の真似などしないんだ。
俺はまだまだ経験が足りてないが、上級冒険者の指導とスキルの重複効果のおかげで充分に戦える。
ガッカリ感は残るが、仕切り直しだ。
どうやら相手はさっきの反撃が予想外だったようで、攻撃の手を止めてる。
守りからの反撃に狙いを変えたんだろう。
今度は、俺から攻めるぞ。
まず狙うのは肘だ!
肘ってのは、割と守り難い。
肘を守りにいくと攻撃ができないからだ。
特に左肘を狙われると難しいはずだ。
案の定、剣を払って左肘を守ってきた。
上手く体の動きと剣で捌いてるな。
俺は交互に右肘、左肘と突きを繰り出す。
それも態とリズム感を持ってやる事で、相手に無意識に次の攻撃への動きを誘導する。
楽に防げる攻撃が数回続くと、張っていた神経に緩みも出易い。
そこでいきなり、攻撃場所の変更だ。
狙いは右足の足首。
前に出ている右足の足首に攻撃を加えられると、相手の行動に制限が掛けられる。
それも腿や膝じゃなくて、遠い足首だから防ぎ難い。
狙い通り相手は慌てて足の位置をズラしてかわそうとする。
そこで今度は、逆側の左膝を狙う。
足をズラしてかわした事で、多少なりとも体勢が崩れている。
そこを狙われた左膝。
これ以上体勢を崩せないから、剣で弾きにいくしかない。
だから、これは囮の攻撃だ!
俺の本命は、弾きにいった剣を持つ右肘の内側だ!
関節部分は、どんな鎧でも弱い。
そこを晒させるための誘導だった。
少し浅かったが、決まった!
相手の右手が剣の柄から離れる。
ここからは、楽になるはずだ。
何でか?と言えば、右側が疎かになるからな。
視界の端に戻ってきた常連客の姿が入った。
おっと、薬が手に入ったみたいだな。
じゃあ、仕上げだな!
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