任務─②
「空が……泣いて……いる……?」
俺は四十雀と同じように夜空を見上げた。無数の星々が散りばめられ、不穏な空気などこれぽちも感じられない。
「ああ。時空の歪みを修復するため、お前に手伝って欲しいのだ」
「手伝うって、どうやって……?」
四十雀は黙り込んだ。
「……#直__じき__#わかる」
そう言って話を終わらせようと翼を広げる。俺に話すことはもうないと言わんばかりに、再び羽繕いを始めた。
「蒼ちゃん?」
一階から声がして、はっと時計を見上げる。
「あ……今行く……」
急いで着替えを済ませ、扉を開けた。その間も、四十雀はずっと
「……えっと……何か食べる……?」
「……いい」
四十雀は一言だけ答え、俺を避けるようにして窓辺まで飛んでいく。
俺はむかついて扉を気持ち乱暴に閉め、階段を駆け下りた。そんな俺をおばあちゃんがいつものにこにこ笑顔で出迎える。
「鳥さんは大丈夫? お腹空かせてる? 何を食べるのかしら」
おばあちゃんはゆっくりと冷蔵庫を開け、中を物色した。
「あー……何を食べるんだろうね。……そういえばさ──」
食卓につきながら無理やり話を変える。
「おばあちゃんこの前、人懐っこい野良猫がいたって言ってたよね?」
適当に話題を引っ張り出してごまかした。ご飯を机に並べていたおばあちゃんは顔を輝かせる。
「今日もその子に会ってきたのよ。本当にかわいくてねぇ」
野良猫の話をするおばあちゃんは、息子さんの話をするときと同じくらい楽しそうだ。
「どんな猫なの?」
「すごく真っ黒でねぇ、おっきな目は綺麗な緑色なのよ」
黒猫の野良猫など滅多に見かけない。捨てられたのだろうかと、少しだけ胸がきりきりした。
「蒼ちゃん、知ってる? 黒猫はね、幸運を呼ぶんですって」
得意気なおばあちゃんに手頃な笑みを返す。彼女はこういったスピリチュアル的なものが大好きだ。
「そんなに言うんだったら、拾ってきちゃえばいいのに」
口にしてからはっとした。案の定、おばあちゃんの顔は幸せそうな笑顔から苦笑いへと変わってしまった。
「そうできればいいんだけどねぇ……」
きっとお金のことを心配しているのだろう。俺は暗くなったおばあちゃんから視線を逸らした。二人の生活費に加え、学費も払わなければならない。その上、雑貨店の売上もあまりよくはなかった。
ばつが悪くなった俺は、残りのご飯を掻き込み、手を合わせる。
「ごちそうさま、今日も美味しかった」
そして、お皿を手短に洗った。気持ちを悟られないよう、笑顔を作るのが大変だった。
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