2023-4-27
何気なく洗面台でメイクを落としていると、ふいに足元に転がる何かを蹴ってしまった。確認すると、簡単、だとか強力、だとかの謳い文句がデカデカと印字されたシールの貼ってある小型洗濯機だった。私が高校一年生の頃に父から貰った誕生日プレゼントだ。その頃は、というか今も週三くらい、洗濯や料理、家事に関しては基本私がやっていた。父とは中学一年生からまともに口を利いた記憶が無いが、何故そうなったかの理由は割愛する。私は一生かけても忘れることは無いだろう。洗濯機を見ていると当時、好きで洗濯をやっていると思われていたのかと不思議になる。洗濯機は家にあるし、小さいことも簡単なことも強力なことも、私には必要なかった。洗濯は干す作業が一番めんどくさいと思うのだが、これはあまり共感を得られない。私は父と口を利かなくなってから、お年玉や誕生日プレゼントといった直接受け取る恩恵は全て断ってきた。結局勿体ないと母が家には置いておくのだが。学費だけは払ってもらっていた。自分ではどうしようもなく見ないふりをしていた。そんなものさえも受け取りたくなかった。高校から進学をして、特待生をとって、なんとか奨学金で通えている。私は生きることが下手かもしれない。私に貼られているシールには何が書かれているのだろうか。洗濯機と同様どこか的を射ない、求めてもいない機能がついているのだろうか。
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