人類総安楽死計画
Guppy of The Zroos
第1話 1cm後ろに宿るもの
オフィス街から繁華街に抜ける道
葉菜子は急いで歩いていた。
以前から気になっていたパンプスがタイムセールで安いと言う情報を聞いていた。
心が躍る
右前方より道を横切った女性が目の前に現れた。
30代の派手な身なりの遅れたギャル。思いもよらぬ事に向こうから声をかけてきた。
「あなた本当に覚えてないの?」ぶしつけだ
一呼吸おいた後
「えっ...どこかで会いましたっけ?」
疑問を疑問で返した。
---いきなりの問いかけが ”あなた覚えてないの”っておかしくないかな---
少しの沈黙の後、変な顔をして去っていった。
会話が成立していないわ
男が近づいてきた。
下品なナンパ野郎だ。自分の都合のみを優先する我慢のならぬ人種
「俺のこと覚えてないか?」
---またか---あんたなんか知るわけないじゃないか---
キッとにらんで私は歩を進めた
---天国からVANされろ!---
地獄に堕ちろの穏やかな表現を心の中で唱えた
今度はおじいさんが話しかけてきた。
私は先制攻撃にでた
「私と会ったことあります?」
「そりゃあるよ」キョトンとした顔して去っていった
---またこれだ---
変だ。そう言えば朝、家を出る時も近所のおやじの所作がおかしかった。私の顔を盗み見ていた
なんなの・・・どいつもこいつも私がどうしたっていうの
–––−–−−−
困惑の意識が、いつも一緒にいる私にも感じられる
私としては何の疑問も無い
私が張本人だからだ
私は葉菜子の1cm後ろに宿るHanako。
葉菜子の潜在意識なのか、もう一つの人格なのか私にはわからないし、気にしていない。
葉菜子はどう思ってるかわからないが、Hanakoとしては自由にさせてもらっている
どうやら葉菜子は私に気が付いていないみたいと最近は確信している
体を借りている私のやらかしたことでの迷惑。
すまないとは思っている。・・・少しだけ
Hanakoは葉菜子と共に歩む
ショーウィンドウは冬支度。
ほほ笑むイケメンのマネキンに視線だけで魅惑を返す
私は会社を経営している
葉菜子は知らない
小娘と思われようが私は社長。
覆面社長という、匿名ジャングルが産んだ時代の寵児、毒の華。
ネットを主体とした小さなブランドだが、特にアイシャドーなんかは、ものが良くて十分に差別化できている。
しかも、自分で言うのもなんだけど天才的ハッカー。
昨日の地上波放送の全てに、私のアイシャドー商品のサブリミナル映像を入れておいた。
テレビは洗脳するのにもってこいだから便利なコンテンツだと思う
モデルは私がした。なんせボッチの企業だから
法に触れる部分では慎重にならざるを得ない。
どこかに発注したら大騒ぎになって足がつく
他を巻き込んでいいことないからね
音声での暗示も入れておいた、
「また会えた、あなたのパートナー」
---傑作だ---とその時は思ってはいた
もちろん痕跡が残らないように後からうまく処理することは忘れてはいない
そこは、私の腕の見せ所
データ復元を試みる個人なり団体が出てきたら、その時はその勇者と対決だ
記憶だけにしか残っていない私との対決
しかし、とんだ副作用だわ。
商品としてのアイシャドーへの焦点がぼやけて、私の姿を下々の者の脳に刷り込んでしまった。
テレビをよく見る世代には遠い記憶、時代のアイコン
私はオードリー・ヘップバーン。かな
葉菜子は無事にパンプスを安く買った。
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