拝啓、死にたがりの君たちへ
桜河浅葱
第1話
まだ夏の匂いが残るキャンパスの門をくぐる。俺はT大学商学部に通う1年生だ。大学でやりたいことは特になかったため、「就活で有利そうだから」という理由で商学部を志し、5か月ほど前に入学した。そんな動機で選んだ学部だから無論、講義に心惹かれることもなかった。しかし授業に出席せず単位を落としてしまっては就職に響くため、卒なく授業をこなしてきた。
就活して、そこそこの企業に入って、そこそこの給料を稼いで。でもある程度の休暇をもらって、特筆すべきことのない人生を歩んでいくんだろう。
いわゆる普通の人生。人を助ける正義のヒーローにも、相対する悪役にもなれないモブの人生だ。「自分の人生は自分が主役よ」などと何番煎じだか分からないセリフを吐いたところで現実はそうじゃないと否が応でも見せつけてくる。人は俺を厭世的だ、と言う。それは間違いだ。世の中を適切に評価しているだけである。
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