キューピッドのクリスマス

平 遊

プロローグ

『お願いです!ボクに、絶対に当たる弓をください!いい子にしますから!それ以外は要りませんから!一生、要りませんから! ノア』


「おやおや・・・・」


 世界中の子どもたちから届く手紙に目を通していたサンタ・クロースは、その一通の手紙を手にして、暫し考え込んだ。

 どこか悲壮感さえ漂うようなその手紙は、サンタ・クロースの中に眠る古い記憶を呼び覚ます。

 何度も文面を読み返し、何度も手紙をひっくり返しては紙質を確認して、やがて、ふぅ、とひとつ溜息をつくと、


「どれ、ひとつ相談してみるとするかのう」


 真っ白な顎髭をひと撫でし、サンタ・クロースは手紙を手に、ゆっくりとした動作で椅子から立ち上がる。


「久方ぶりじゃ、元気にしておるかのう」


 フォッフォッフォッ


 と。


 笑い声だけを残し、サンタ・クロースは古い友人の元へと向かった。

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