第五章『生死』
第35話 ナカノ・ミオ
「今日は何日だと思うの?」
と、
彼女は起きたばかりなのか、髪が乱れてまだ寝間着を着ている。それに、階段を下りながら大きな
今は午前八時だから、そろそろ開店準備をしないと。
「何日、ですか……?」
言って、私は首を傾げた。
大事な何かを忘れてしまった気がする。もしかして、
本当に見当がつかない。
「あの、わからないんですが……」
「
車に轢かれて亡くなった
「そうですか? 今更お葬式が行われるのか。……あ、悪い意味ではありませんでしたが……。ただ、彼女が死んだ日から誰も連絡してこなかったので、天涯孤独かと思ってました」
「いいえ、そんなことないのよ。実は、昨日彼女のお母さんから連絡が来た」
「私たちは誘われたんですか?」
「そう。わたくしたちだけじゃなくて、願い事の叶ったお客様は全部誘われたの」
「結構賑やかになりそうですね」
「そうね」
故・
正直、私は彼女の名前を名乗るにはふさわしくないと思う。だって、そもそもこの仕事を受け取ったのは
メイド喫茶に行ったことはあるけど、
しかし、これは本当の私ではないのがわかっている。私は
昨日お互いに気持ちを打ち明けてから、私は元の名前を取り戻したくなった。
だから、今日こそ
本来ならば彼女は
もちろん彼女の本名は知らないけど、『
「では、葬式はあと五時間で始まるのでそろそろ準備しないとね。今日は臨時休業にするから、今朝メイド服に着替えなくてもいい」
「わかりました」
そういえば、葬式に行くのは初めて。だから、どんな服装を着ればいいのかよくわからない。たしかにメイド服はふさわしくないのはわかっているけど、OL服もダメなのかな?
「実は、葬式に行ったことがないんですけど。何の服を着ればいいんですか?」
「わたくしも葬式に行ったことないけど、だいたい黒い服が一般的らしい。それに、肌を露出しない服を選んだほうがいい」
ーーつまり、黒いタイツくらいはいけるけど、白いシャツはダメなんだよね。
それなら、黒いワンピースを着たほうがいい。今から買いに行ったらまだ葬式に間に合うだろう。
「そうなんです。それなら、私は黒いワンピースを買いに行こうと思います」
「なら、わたくしも行くよ。ここではメイド服と寝間着しか持ってないから」
言って、
こんな時に備えて、私服を買ったほうがいいんじゃないか?
♡ ♥ ♡ ♥ ♡
数分後、
そして、
その
「さて、行こうか?」
と、
「はい、行きましょう」
私がそう言うと、
カランコロンカラン。
その聞き慣れたドアベルの音が、私にとって「あら、お客様が来たのよ」という意味になってきた。
しかし、入口に立っているはずのお客様はいなかった。私は少し違和感を覚えた。
朝風が店内に吹き込んできて清涼感を与える。
やがて、私たちは商店街にたどり着いた。
「今日の風は気持ちいいね」
彼女の髪の毛が風に舞い上がって、青空に紛れたように見えた。
「そう、涼しいですね」
立ち並ぶ複数のメイド喫茶を通り過ぎたあと、私たちは何らかの洋服屋に着いた。
大きなショーウィンドウに目をやると、向こう側にはいろいろな洋服が吊るされている。
洋服に惹かれて、私は店に近づいていった。
振り向くと、
声をかけようとした矢先に、私は店員に挨拶された。
「いらっしゃいませ!」
いきなり店員に挨拶されて、私はびっくりした。
私は視線を
時間を無駄にしないように、
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