第28話 場面にあった演技を

今から2回目の演劇が始まる。ホントの一番最初のシーンは魔王がとある国を侵略するところから始まり、そこから主人公が出てくるまでは俺の出番はないので、舞台袖でイメージを固める。


そして演劇が始まると、まず浜崎と布目が村人役でしゃべり始める。

例の委員会決め事件の時とは違い、ちゃんと声も出ている。俺の中で心配していた要素の一つが消えた。すると、


「この国は魔王が乗っ取った!おとなしくひれ伏すがいい!」


魔王が登場するシーンだが、お客さんは楽しめているようだ。というか雅の演技力がすごい。勉強できない代わりにこういう別のところに才能があるわけか。


それから俺が登場し、八百屋さん役の真城那央しんじょうなお君と会話するシーンに。

肝心の俺が登場するシーンでは、俺のできる演技の1つ、自分じゃない周りの人を引き立てるということをして登場した。

この演じ方は、決して俺は下手に演じず、なおかつ決して目立たずに演技する。そうすることでその場面での1番映るべき人物に注目を集めることができるのだ。


シナリオ的になんで八百屋さん??となるだろうが、理由を話すと、配役したはいいものの、人が余ってしまい、この演劇では裏方なども特に人数が必要ないため、無理やりねじ込んだ形になっている。そこは脚本の天才、愛花のおかげで違和感なくみられる...はず。多分。


そしてそのあとまたねじ込みで作った役の主人公が遊んであげる子供役の石黒日色いしぐろひいろさん。あまり喋ったことがなかったのだが、いつも話してるメンバーの布目達に聞いたところ、頭はいいのだが、たまにアホになるとかなんとか...。

例を出すと、数学で解いているときに「三角形の面積は底辺×高さ!」っていってたらしい。

また関係ないけど中学校の頃は英語で「rise」という単語が出てきたときに、とある髪の毛の特徴が強い?人が「ごはん」て言ったら笑ってしまうくらい笑いの沸点が低いそう。


そんなこんなで偶にねじ込み役が出てきたりするものの、劇は順調に進んでいった。

俺はその時にあった演技をしていたのだが、いざ俺の出ない場面になると、愛花を始め通称俺のファンの人達から


「やっぱり栄太君は流石だね!」

「あの場面の演技がヤバかった!」

「すごい!生で見ると全然違う!」


などと言い方はあれだが凄い言われようだった。そりゃあ嬉しいことだけどね。

今までの経験は無駄ではなかった!!!やったぁ。

そして愛花に褒められるとすごいやる気が出てくるんだけどなんでだろう?

考えたら出てきそうな気がしたけど、なんとなく恥ずかしくなりそうだったから俺は考えるのをやめた。

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