第7話 女子の部屋への緊張と正体への焦り

 帰る…。まぁ中野さんの家にお邪魔するのだが、それでも学校から出るだけでどっと疲れた気がする…。


 察しがいいやつならわかるだろう、例の嫌ーな視線と陰口のダブルコンボ。本当に陰キャならダメージをくらっているのだろうがあいにく俺は陰キャのふりなので疲れだけでとどまっていたのが救いだ。ホントに。


 そんな疲れた中で、1つ違和感...が。

 変ではないのだが、やたらと中野さんが俺について聞いてくるというかしゃべり倒してくる。


「好きな食べ物はー?」

「何か好きなこととか趣味とかあるー?ドラマとかーアニメとか!」

「私はねー高校生俳優の上野明が好きなんだー!ねぇ知ってるかな?」


 こんな感じに。

 そんな質問攻めにに対し、俺は


「ちょっと待ってね?数が多いから1つずつ聞こうね、俺そんな暗記能力高くないから。んで好きな食べ物はカレー、趣味はドラマもアニメもだし小説限定だけど読書も好き!これでいい?」

「いや覚えてるじゃん!」

「そういう問題じゃなくて、いっぺんに色々聞かれると対応しにくいから1つずつ聞こうね?って話」

「はい、分かりました」


 こんな感じで答えた。ほんの少し怒り気味で。こういうときに演技能力に助けられる。


 そんなことを話していると中野さんの家に着いた。

 中野さんに案内されるまま彼女の部屋に入ろうとする。そのときに俺は思った。

 あれ?俺クラスメイトとかの女友達の家になおかつ部屋に入ったことなくね?と。

 結論、昔未海の家に行ったときの記憶だけを頼りにしなくてはならなくなった。


 そして覚悟を決めた俺は恐る恐るドアを開け、中野さんの部屋に入った。


 そのあとにあったことと言えば、さっきの質問攻めの1段階強化したやつに俺が答え続けた。

 そして、一旦質問攻めが落ち着いたときに俺は中野さんにこんなことを言われた。


「早川君は私が上野明のファンなのは知ってるでしょ?」

「まぁ、ここにお邪魔するまでに中野さん自身が言ってたからね」

「じゃあ、単刀直入に聞くんだけど、早川君って親戚に芸能関係の人っている?」

「え?なんでか教えてもらっても?」

「前出かけてた時に早川君らしき人が芸能事務所のスプラッシュに入っていくのを見て…」


その言葉を聞いて俺は記憶をたどる。最近だと…あのときか、ここは何としてでもばれないようにしなきゃいけないなぁ。これから気を付けよう


「人違いじゃないかな?俺いつも家出るの学校行くときかDVDレンタルしに行くときくらいの陰キャだからさ?」

「そっか...もしスプラッシュの人と知り合いなら明様のサインをもらえると思ったのになぁ…。」


いや俺のサイン目当てなのね。しかも明様って…。


「というか中野さんってそんなに上野明?っていう人が好きなんだね」

「もっちろん!演技は完璧だし、インタビューとかでの受け方もすごいんだよ!出演者全員をよく見ているのがわかるぐらいいいところを言えるし、例をあげるとしても悪口は使わない!顔もかっこいい!まさに完璧!」


それを聞いた俺は心の中で

・何かあった時が怖いから周りの人をよく見てる

・単純に悪口使うキャラでやるの嫌だし、そういう言葉を発する勇気がない

だなと思いつつ、言い風にとらえられていて安心した。


「今の来ただけでもどのくらい好きなのかが伝わったよ」

「じゃあ早川君も明様のファンになろう?」

「それは断る!」

「えー、せっかく一人同士を作れると思ったのにー」


これはちゃんと注意してないとバレそうだな。未海にバレてないのもアイツの感が悪すぎるだけだし。他の感はクソ鋭いくせに…。

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