【最終回】頭に被ったブラはどうなる!?

 頭にブラを被った状態で、妹の莉子りこと廊下で鉢合わせる。

オレ、もうダメかもしれない…。


「やっぱりあたしのタンスを開けたの、お兄ちゃんだったんだね」

ゴミを見るような目をする莉子。


「タンスの事、気付いてたのか?」


「当然だよ。あたしはきっちり閉めるのに、何故か微妙に開いてたんだもん。そんなことするのって、お兄ちゃんしかいないじゃん!」


「……」

反論は不可能だな。


「さっさと、あたしのブラ返して!」

莉子が俺の頭に被さっているブラを遠慮なく引っ張る。


「いてーよ。これ以上引っ張るなって」

今まで何度も引っ張ってるから、毛根が痛いぜ。


「え? 何で取れないの?」

混乱した様子を見せる莉子。


「被ったきっかけはくだらない罰ゲームだったんだが、今は本当に取れないんだ」

取れるもんなら、とっくの昔に取っている。


「あたしのブラが、そんな罰ゲームのために…」

彼女は、信じられない様子を見せる…。


「お母さんに何とかしてもらうから!」

そう言って、リビングにいる母ちゃんの元に行く莉子。


マジかよ? 莉子にバレただけでも辛いのに、母ちゃんにまで…。

覚悟を決めるしかないな。オレも急いで後を追う。



 急いでリビングに向かうと、莉子と母ちゃんが話し込んでいる。

オレを見た母ちゃんは青ざめる…。


「貴弘あんた。何やってるの?」


「説教は後で聴くから、これ何とかしてくれ!」


オレは姿勢を低くし、莉子と母ちゃんがブラを引っ張りやすくする。

その後、2人が引っ張るんだが…。


「痛い。マジ痛いって!?」

毛根もだが、心も折れそうだ。


「接着剤だとしても、取れる気配すらないわ。どうなってるの?」

母ちゃんが頭を抱える。


「でしょ? お母さんでも無理か…」

落ち込む莉子。


「もうすぐお父さんが帰ってくるから、お父さんに任せましょ」


父ちゃんか…。間違いなく、げんこつは食らうな。後は想像がつかない。


オレ達は、父ちゃんの帰宅を待つ。



 …玄関の戸が開く音がする。父ちゃんが帰ってきたな。

母ちゃんは事情を説明するために、急いで玄関に向かう。


父ちゃんの罰が怖い…。待つだけでメンタルが削られるな。

…足早にリビングに向かう音がする。


「貴弘!! お前、何やってるんだ!!」


予想通り、げんこつを食らうオレ。めちゃくちゃ痛い…。

それからブラを引っ張る父ちゃん。


「…確かに取れんな」


「だからどうしようか困っていたのよ…」

時間が経っても、母ちゃんですら解決策が浮かばない様子…。


父ちゃんはどうするんだろう?


「仕方ない。燃やすか」


「燃やすの!?」

驚きの声を上げる母ちゃん。


「それしかないんじゃないか? 貴弘の髪も少しは燃えるだろうが、それはとして受け入れろ。良いな?」


オレを見る父ちゃん。


「もちろんだよ。オレ、2度とこんな事しないから!」


「という訳だ。風呂場で早速始めよう」

そう言った後、リビングを出る父ちゃん。


風呂場なら、シャワーですぐ消火できるもんな。さすが父ちゃん!



 風呂場に移動するオレ。父ちゃんはライターを持っている。


「今から火をつけるから、動くんじゃないぞ」


「うん…」


火を付けられるのって、緊張するな…。


「…何とかついたみたいだぞ。後は貴弘、自分で何とかしろ」


「わかってる」


父ちゃんは風呂場から出て行った。念のため、ライターを置いてくれたようだ。


風呂場の鏡で、一部始終を観察することになる…。



 ……長い時間をかけ、オレは頭に被ったブラを全て燃やすことができた。

当然髪も少し燃えたが、取れたんだから文句は言う気はない。


オレは早速、リビングに向かう。


「やっと燃やせたよ」


父ちゃん・母ちゃんだけでなく、莉子もリビングにいた。


「…その髪では厳しいな。明日の学校は、床屋で坊主にしてもらってから行け」


オレもそう思っていたから異論はない。


「貴弘。お前はしばらく友達と遊ぶことを禁止する! 真面目に勉強してろ!」


「わかった…」


げんこつとこの程度の罰で済むなら、安いものだな。素直に受け入れよう。



 次の日。オレはいつも行く床屋の開店時間まで勉強することにした。

やったことは変えられないから、心を入れ替えて頑張るしかないんだ。


開店時間になったので、1人で床屋に向かう。

床屋のおじさんが、オレの髪を見てとても驚いている。


普通に生活して、髪が燃えることなんてないからな…。

さて、どうやって言い訳しよう?


一瞬考えた末『ガスコンロの火が頭に燃え移った』と説明した。

これでも無茶苦茶だが、と解釈してくれるだろう。


オレの予想通り、おじさんは納得した様子を見せる。

頼むから、根掘り葉掘り訊かないでくれよ…。



 …頭皮が見える程じゃないけど、坊主になったオレ。

こんな髪型にするのは初めてだ。けど、思ったより悪くないな。


オレは支払いを済ませてから、床屋を出る。


今日からオレは生まれ変わるんだ。

父ちゃん・母ちゃん・莉子、見守ってくれよな!

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