第37話 冒険者会議 議事録その四
【第九十回 冒険者会議 議事録】
冒険者1
⇒本日の主題は獣人国についてだ。獣人国は魔の森の南側に出来た獣人達の集落である。住人の数は三百名程度。大半は帝国の元奴隷だが、噂を聞きつけて様々な地域から獣人が集まっている。今後、さらに膨れ上がることが予想される。
冒険者2
⇒本当に国として機能するのか?
冒険者3
⇒それは未知数だが、支援者によって体裁は整いつつある。獣人国は城壁に囲まれ、立派な城もある。マルスの仕業だ。
冒険者4
⇒獣人国とマルスの関係性は?
冒険者5
⇒副ギルドマスターが確認したところ、獣人国の女王に脅されて協力したそうだ。
冒険者6
⇒脅しねぇ。
冒険者7
⇒「ローズちゃんを守る為に仕方なく!」とローズが擁護したとか。ただ、一度拉致されたのは本当らしい。
冒険者8
⇒獣人国の女王ルーが脅したのはマルスだけじゃないぞ。王国の上位貴族の寝室に「ご挨拶」の手紙が届けられたそうだ。
冒険者9
⇒先に貴族に釘を刺したか。国王を狙わない辺り、なかなかの切れ者なのか? そのルーとやらは。
冒険者10
⇒単純に国王の寝室は侵入が厳しいからでは?
冒険者11
⇒何にせよ、貴族達の間で「獣人国に手を出さない方がいい」という共通認識が出来たのは大きい。今の国王は貴族の意見に流されやすいからな。
冒険者12
⇒辺境伯は?
冒険者13
⇒辺境伯のところには魔の森の奥にいる強力なモンスターの素材が届けられたそうだ。
冒険者14
⇒力を示したか。辺境伯も動きづらいな。
冒険者15
⇒我々冒険者として、獣人国とどのように関わっていくのか? 魔の森の南側には今まで拠点と呼べるような場所はなかった。獣人国に冒険者ギルドが置かれるなら、拠点をラストランドから移す者出てくるかもしれない。
冒険者16
⇒副ギルドマスター曰く、獣人国に冒険者ギルドの支部は今のところ出来ないそうだ。
冒険者17
⇒そもそも、獣人国への入国は出来るのか?
冒険者18
⇒街に入ることは出来る。城は厳重な警備が敷かれていて近寄れない。
冒険者19
⇒魔の森で狩猟と農業をしているだけなら、当面は静観ということだな。開拓村と対立しなければいいが……。
冒険者20
⇒確かに獣人国と開拓村の対立が一番の懸念だな。マルス領というか、マルスが仲介役になりそうだな。
冒険者21
⇒マルスの重要性が増したな。奴はこれを狙っていた?
冒険者22
⇒そこまで頭がまわるとは思えないが……。
冒険者23
⇒獣人国に対して帝国の動きは?
冒険者24
⇒直接の動きはない。ただ、帝国内で奴隷の主人が殺される事件が続発しているそうだ。殺されるのを恐れて奴隷術を解除する者まで現れているらしい。
冒険者25
⇒その殺人事件に獣人国が関わっている?
冒険者26
⇒可能性はあるが、不明だ。
冒険者27
⇒獣人国が原因となって帝国と王国の緊張が増す可能性は?
冒険者28
⇒帝国軍は引き続き獣人の領域を侵攻している。王国との国境に兵を展開する余裕はないと思うが……。
冒険者29
⇒現皇帝はひどく気まぐれと聞く。何が起きても不思議ではない。
冒険者30
⇒国境で緊張が高まれば傭兵の需要が増す。わざわざランドランドの冒険者が動くとは思えないが、注意が必要だ。
冒険者31
⇒貴族軍の募集は?
冒険者32
⇒クライン侯爵家が積極的に行っているそうだ。帝国との開戦を想定しているのかもしれない。
冒険者33
⇒王国一の武門、クライン侯爵家か。長男が病死したと聞いたが。
冒険者34
⇒次男が【剣聖】のジョブを授かって盛り返したようだ。他の貴族へのアピールも兼ねて、戦場を欲しているのかもしれない。
冒険者35
⇒いかにも貴族らしい。
冒険者36
⇒馬鹿なことをしなければいいが……。
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