チームをクビになった俺が中堅Vtuberをコーチングしたらバズったしなぜか俺もバズった。

竜田優乃

第1話 契約

 HEROX world championship


 世界中で今人気沸騰中のFPSゲーム【HEROX】の世界大会が日本で行われた。

 世界から20チームが集まり、現地でナンバーワンを決める世界大会。

 そして俺、光永瞬希みつながしゅんきは日本代表としてこの大会のオーダー、所謂リーダー役として出ていた。

 

 オーダーとは瞬時に状況を判断して、チームが常に良い方向に進むように考えたりどこをポジションとして取るかなどを決める。

 オーダーが優れていなければいけない理由はやはり、言葉一つでチームを動かすことができるからだろう。

 オーダーがミスをすれば連鎖的にチームメンバーもミスをする。

 

 そして俺はこの大会でミスをして、eスポーツチーム【Speak】をクビになった。

 理由としては契約満了が近かったのと世界大会での判断ミス、そして俺の契約終了後に、目を着けていた若手のアマチュアと契約を結ぶ事が決まっていたからだという。

 

 俺も今年で21歳、プロゲーマーとしては中途半端な歳だし俺より使える若手なんて腐るほどいる。

 それに、俺としてはやっとHEROX以外のゲームに手を着ける事が出来て嬉しい。しかし、その反面でチームメイトと顔を合わせる機会や交流する機会が減ったのは凄く寂しい。

 一方的に契約を切られたとしても3年も所属していたたんだ。

 それなりに思入れもある。


 俺は目に涙を浮かべ、余韻に浸りながら【Twllter】を更新した。


 ~~~


 SNSを更新してから2日。

 俺のチーム脱退はもの凄い反響があった。

 

 それこそ【世界大会2位のチームメンバーが突如脱退!?】という見出しのネットニュースが作られ、連日テレビでも報道されるぐらい。

 色々なメディアからインタビューや取材を申し込まれたが、俺はすべて拒否した。

 Speak公式Twllterも俺の脱退を告知していて、内容としては契約満了に伴う脱退という事になっていた。

 

 正直、今回の出来事を全て公に晒してやろうかと思ったが、今後のストリーマー人生に悪影響を及ぼすと思い俺は晒す一歩手前で踏みとどまった。

 

 白い壁、防音室を見渡す。

 コミュニティ大会の優勝商品であるトロフィーや盾、アニメのタペストリーなどが見える中、ひと際目立つ世界大会2位という証の大きなトロフィー。

 俺はそれを手に取り、抱きしめながら泣いた。

 もしあの時、ポイント計算を瞬時に出来ていたら、俺が敵をあと一枚持って行けていたら、回復を巻くタイミングを間違っていなければ。

 嫌な思い出がどんどん蘇って来る。

 

 こんなトロフィーいっその事壊して、無かったことにすれば良い。

 そう思った時だった。

 俺のスマホに一件の通知が来た。


 俺はトロフィーを飾っていた位置に戻し、スマホを手に取った。

 

 通知の内容は【Discard】というメッセージアプリ。

 通話時には重宝されるノイズキャンセル機能やスピーカーミュート機能など様々な機能が充実していて配信者界隈では有名なアプリだ。


 メッセージ送信者は世界大会を一緒に出たチームメイトである「4KAGIあかぎ」という選手。

 よく俺のオーダーを無視して戦犯となる事が多かった選手だが、世界大会前から意識を変えたのかダメだと思う所は俺に強く言ったり、逆に良かった所は褒めてくれてたりと言い合いは日常茶飯事だったが仲は良く、気の合う選手だ。


 「なんか、公式の声明違うっすね」

 「なんだよ、気にしてくれてんのか?」

 

 「いや、自分もチーム抜けたんすよ。まだ声明出てないっすけど」


 俺は4KAGIの送ったメッセージを見て拍子抜けした。

 そして数秒して理解がようやく追いついて送ったメッセージが


 「は?」

 

 だった。


 立て続けに、世界大会に一緒に出ていた三人目のメンバーである「G4siinがしん」からも


 「俺もチーム抜けたわ。やっぱリーダーが一番だからさ」


 とメッセージを送って来た。


 俺の瞳からは涙が溢れ出て、気付けば二人に召集をかけていた。 

 いつも使っていたサーバー内に『@everyone』と送り、二人と会話を始める。

 終始何を話したかは覚えていないが、とりあえず俺が号泣していた事は覚えている。

 良いチームメイトを持ったなと思い、俺は安心感と抱擁感に包まれた。


 そしてその夜、Speak公式Twllterから二人の脱退が発表された。

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