ひと夏の夢

赫彩(あかいろ)

第1話 夢の始まり

これは私の体験した少し不思議な夢の話だ。


あれは私がまだ小学生だった時のころ。

夏休みにいつも地方に住む祖父母の家に1週間ほど泊まるのが私の家では習慣だった。

あの時はいつも通り、夏休みの宿題とか、向こうで遊ぶ花火とかを持って泊まりに行った。


「久しぶり!おじいちゃん、おばあちゃん。元気?」

「お~元気じゃったよ~。元気しとったかツトム君?」

「うん!僕は大丈夫。またこっちでいっぱい遊ぶんだ!」

「ちゃんと宿題もね。さ、冷やしたスイカがあるけど食べるかい?」

「食べる~」


例年通りの変わらない日常のやり取りから始まった1週間。

今思うとあんな体験が待っているなんて...


泊まってから2日目。

その日は宿題をほおりだして外に遊びに行った。

「おやつぐらいには帰るから~」

と伝えて家を飛び出した。


都会にはない空の広さ、海の輝き、私は冒険心をくすぐられた。


「どこ行こうかなー」

「そうだ、あの山にいってみよ」


そう考えた私は祖父母の軒先から見える小高い山へ冒険をしに行った。

その山は祖父母から不思議な話を聞いていた山だった。


「あの山はな、昔おばあちゃんが小さいころに突然光ったことがあったんじゃ」

「それから警察の人がわらわらと山へ入っていってな」

「また暫くしたらスーツを着た外国の人たちが山に入っていったんじゃ」

「それでな、警察がな「あの山へはあまり近づかないでください」と言うたんじゃ」

「ばあちゃんは気になってな、山に行ってみたんじゃ」

「山はいつもどおりで特に何もなかったんじゃが、帰り際にちらっと人影を見てな」

「その人は不思議な恰好しててな、ばあちゃんはなんでか怖くなって帰ったんじゃよ」


その時の私も思ったが「入ってはいけない」と言われた山に躊躇なく踏み入るおばあちゃんは流石だなと思う。

そんなおばあちゃんに習って私も山へと向かった。


何があるのか、どんな人がいるのか、そんな好奇心が私を山へと向かわせたのだろう。

そして私は山である人に出会った。

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