第75話

「ほい!」

 妹がやたらとたくさんあるラジオの一台のボリュームを上げた。

 杉崎のおじさんとおばさんが目を丸くした。

 妹よ! 大きすぎる!!


「え……よう……ここにいます……」

 

 うぎっ! 

 わからん!

 ちょっ、声が大きい!!

 それにどこ?? 女神様??


「う、うーん……わかんらん!」

「ほひいちゃん! なんか呼んでる感じ……」

「あれ? そうなの? 影洋くん。なら、すぐに行ってやって」


 ええい! 女性の居場所がわかんらんわー!

 さて、どうする?


「影洋くん!」

「ほひいちゃん!」

「……」


 ええい!


「とにかく! 影の世界へ行ってみよう!」


 俺は目を丸くしている杉崎のおじさんとおばさんにも礼を言って、傘がいっぱい脇に差してある玄関で妹と外へと出ようとした。我が妹は杉崎からパンを一枚貰ったが……。


「あれ? 影洋くん!」

 杉崎は俺たちを呼び止めて、何かに気がついてラジオをいじる。

 更にボリュームが上がったラジオからは……。


「あなた……ようこそ影の世界へ……」

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