第40話 

「そういえば、影洋くん。あなたの影って……あれ? あなたの妹さんの影もないわよね」

「ああ、俺と妹の影はないんだ。それが女神さまから試練だといわれてるんだよなあ。多分……」

「ほい。私の影もないです。これは試練です」

 

 心影山からのトンネル内で、突然四方からライトで照らされた。

 強い光に目を細めて周囲を見ると、いつの間にか俺たちは囲まれている。

 トンネル内は真っ暗だから今まで気がつかなかったんだ!  


 それの光は右と左の自動車のライトだった。

 光で露わになった影のシルエットの中には、俺の影はいない。だけど、全員が全員斧のような影を持つ武装した大男たちだった。


 照射されたライトの中央に立っている俺たちは格好の餌食だ!


「うぎっ!」

「きゃ!」

「ぶー!」


 退路もない!

 隙もない!

 助っ人も多分いない!


 では、どうするか!


 俺は即座に踏み込んだ。

 一人の斧のような影を持つ大男の間へ。


 すかさず大男の影の腹に二発膝蹴りを打った。

 大男がもんどりうって倒れた。

 けれど、すぐに後ろから杉崎の悲鳴が聞こえた。


 が。


 ゴキッ!!


 鈍い音と共に自動車のライトに照らされているのは、地面に倒れた二人の大男の影しかなかった。


 なん???

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