第38話

 こちらにニッコリ笑った杉崎は意外なことを言った。

 

「お腹空いてない? 非常食とか持って来た? 何か食べるものあげるよ」


 うぎっ! なんですとーーーー?!

 あのいつも教室の物陰に隠れていた陰キャの杉崎が世話焼きですっごい優しい!

 う、陰キャでない杉崎が笑うと可愛いな。と、少し思ってしまった。

 

 そんなことより!!

 今すぐ影がなんで逃げたか考えなければ!!


 うーん……。


「杉崎? 少し後ろを向いてくれ……」

「え? いいけど」

 

 俺の感が正しければ……。


 後ろを向いた杉崎の黒いコートの下を見た。辺りは真っ暗な闇だが……。


 あった!


 こりゃ、大物だ!!

 この分だと、公平の奴や恵さんも……。


 …………


「おにいちゃん! 頑張れ! 頑張れ!」

「うー、ふあーい……」


 俺は徹夜をして杉崎の持っていた登山道具一式の中のストックで岩面を掘っていた。

 本来は体のバランスを取るのに使うのだけど……。

 いくら掘ってもストックが壊れないようにと手加減しているから。なかなか掘れない……。


 他のレインウェアやカメラ、水筒などは使えないのだから仕方がない。

 いつになっても真っ暗な山でひたすら掘り続けていると……。


 うぎっ!

 やったぞ!

 掘れたーーー!!


 岩面に浮き出た影斬りの刃は、ナイフの形をした不気味な形状の武器だった。まるで、炎が豪快にメラメラと燃え盛っているような刀身だった。


「さすが! おにいちゃーーん!」

「おー、ようやく取れたの? そのナイフ何に使うの?」


 我が妹と杉崎も徹夜をしてくれていた。

 これで、影たちとの戦いで相手にダメージを与えられるはずだ。



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