第33話

 桜の花弁が舞う暗闇の窓の外を眺めた。

 きっと、心影山には俺の影がいるはずだ。

 俺には直観的にそう思えた……。


 一階へと妹と降りると、今朝の飯はフランス料理だった。中でも郷土料理が多かった。クリームスープであるビスク、ポトフ、ガレット・プルトンヌに鴨のコンフィなどを食べた。おじさんは朝だというのいにクリュグをがぶ飲み。仕事はそのままで行ったんで、内心焦った。


「ほにいちゃん。今日も美味しかったね。私、絶対に恵さんと結婚する」

「いや、光。恵は正真正銘の女だ……」


 一人分の登山道具一式を俺が担いで、妹と外へと出た。

 目的地の心影山は学校の裏にあるからここからすぐだ。

 芝生を歩いて、15分。

 やっと、屋敷から出られた……。


「おにいちゃん。心影山へ行く前に疲れるよね」

「慣れろ妹よ!」

「ほい!」


 いつもの通学路をしばらく歩くと、書統学校の裏側にそれはあった。

 

 心影山だ。


 薄暗い夜なので、暗闇の中で聳えていた。


「そういえば光! どうやって、おじいちゃんとおばあちゃんを助けた?」

「ほひ。普通に……」


 妹とよ……その普通が普通じゃないからわからないんじゃないか!

 

 俺は内心叫んでいた。

 心影山入り口には、塀に囲まれたトンネルがある。

 その真っ暗なトンネルを通ると、今度は広大な地面に小石や枝が散乱する荒れ果てた山道が現れた。


 ここを登っていけばいいんだな。

 やっぱり険しい心影山でした。

 たまに木がぽつんと立っている以外は、荒涼とした山肌だけの山だ。これは急な斜面をただひたすら登るしかない。 

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