第28話

 家には誰もいないし。

 というか家ないしな。


 うーん。

 どうしようか?


「……?」

 

 暗闇の中でよく見ると、店員は……? クラスメイトの陰キャの杉崎 香だった。

 そういや、しばらくこの店へ来ていなかったけど、ここでバイトしてたんだなあ。


「あはははは。杉崎じゃないか……ここでバイトしてたんだ」

「影洋くんこそ。学校休んで心影山に行くんだって、登山道具一式をこの前買ったんじゃないの? どうしたの? 頭? 大丈夫? 山から落ちて打ちどころが悪かったとか?」

「いや、まだ山には行って……そういえば!!」


 そうだ!!

 俺の影が登山道具一式買って心影山に行ったはず。

 おじいちゃんとおばあちゃんは無事なのか?? 


「なあ、杉崎。この前の俺って、どんな様子だった?」

「? ほんとに打ちどころ悪そうね。別に普通だったわよ」

「じゃあ、ごめん。いつ頃だった?」

「うーんと、三日前よ」

「うぎっ! もう遅いかもな……俺が混乱していなかったら……」

「そうね、早く病院行ったほうがいいわよ」


 陰キャだった杉崎は普通の明るい女の子に変化していた。


「そうだ!! 杉崎! もう一つ聞きたい! 心影山ってどこにあるんだ?」

「多分、あんたがこれから通う病院の傍よ。ここから近いじゃない。心影山って学校の向こう側に聳え立っているから。見てないの学校以外?」

「そうか! ありがとな! じゃあなー!」


 俺は学校の方角へと駆け出した。

 

「お大事にーーー!!」


 ホームセンターから杉崎の声が聞こえた。

 そうか! 影の世界にしか心影山はなかったんだな。

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