第25話

 俺は教会の右の部屋へと急いで向かった。

 だが……。


 うぎっ?!


 俺は立ち止まった。

 部屋の中には大きな影が三つあったからだ。

 影たちはこちらに即座に反応して構えた。

 どうやら、型からするとボクシングのようだ。


「ひょっとして、俺の影からの刺客か?! あいつ俺の家で俺に気付いていたんだ!!」


 俺も心影流の型を構えた。

 

「お前たち。そいついには迂闊に近づかない方がいい」


 部屋のドア付近の窓から俺の影の声がした。

 俺は内心冷や汗を掻いた。


「そうだな……全員で一度に体当たりをするんだ!!」

「うぎっ?!」


 俺の影の言葉に。

 俺は心影流の構えを解いた。

 咄嗟に逃げの態勢を作る。


 心影流には少しだけ弱点があった。

 大男の体当たり。

 それも大勢に囲まれたりした時の体当たりは避けるしかない。


 俺の姿をした影が素早く窓から右の部屋のドアに立った。


 退路が絶たれた!

 

 こうなりゃイチかバチかカウンターを一度にしなければ……。


 大きな踏み込みの音が部屋中に響き渡った!

 三つの大きな影が俺に向かって、一斉に体当たりをしてきた!

 

 俺は再び心影流の構えをし、目を閉じて呼吸を止めた。

 

「そこだーーーーー!!」


 すぐに俺には三つの大きな影の全ての隙が見えた。

 渾身の力で右上段回し蹴り。右膝蹴り。腰を降ろしてのアッパーカットを放った。

 ゴキッと音が三つ鳴った。

 俺の攻撃の全ては瞬間的に全員の影の首を打っていた。


「やった!! どうだ! 見たか! 心影流は最強の守りの技だーーー!!」


………


「ふん! 後ろががら空きだ!」

「がっ!!」


 俺の影が俺を羽交い締めにした。

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