第20話
緑色で普通の屋根だが、全体的に蜘蛛の巣が張り巡らされている。出入り口のドアもそうだった。
古びたドアは、頑健な木製だった。
ノックをすると、乾いた音が辺りに鳴り響いた。
「いらっしゃい! 開いてるよー!」
店員さんかな?
本屋の奥の方から野太い声が聞こえた。
こんなところに本屋?
いつも歩くか走るかしている通学路の傍に本屋なんてあったっけ?
きっと、野太い声からすると大男か太った男なのだろう。
うぎっ?!
まったく違った。
奥の本に埋もれたレジには……小さな小さなおじさんがいた。ぺラリぺラリと分厚い本をかなり遅いスピードで読んでいて、時たまこちらに目をうかがわせている。
どう見ても、声だけ威圧感があって、弱弱しい体格なんだな。
きっと、このおじさんは表の世界でもギャップが激しいんだろうな……。
そうだ!
ここでならこの街の情報も手に入るだろう。
ついでに、心影山の場所もわかるはずだ。
店内に差し込む闇がスッキリとした夜から、やがて柔い暗黒へと変わるまで俺は色々な街に関する本を読んだ。
それでわかったことが幾つかある。
この街のすぐ近くに心影山があること。
この街には黒い家が四つあること。黒い家は昔は元々、町民の集会の場所だったようだが、今では影が占領している。
それと、俺の家は、数年前に取り壊されているようだ。
原因はやはり父さんと母さんは何者かに殺されてしまっていたからだ。
ここ影の世界では俺たち……息子と娘は存在していない。
「ふーっ……ちょっと一休みだー。色々とわかったなあ。良かったぜ。近所を見て回らなくて、近所っていっても広いからなあ」
元々、俺は本は好きだった……。
小さい頃は、色々な冒険小説を読んでいたっけ。
これはおじいちゃん譲りだ。
おじいちゃんは冒険小説好きだった。
「おーい、そんなにいっぱい本をタダ読みして、ちゃんとその本の山は買ってくれるんだろうな?」
「……」
真っ暗な奥のレジにいる文弱なおじさんが言った言葉に俺はひたすら無言を貫いた。
が……。
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