第一章 Part7

ヒナが連れ去られ、気を失ってしまったアスタ。そして、アスタが気を失って、数十分がたったある時、一人の少女の声が聞こえた。


「・スタ、ァスタ、アスタ!」


「んっ、うっ、う~ん、!?」


アスタは目が覚めた。


「アスタ・・」


目覚めたアスタに、彼女は優しげに言う。


「…!?、ユキ、さん」


そう、声の主はユキだった。アスタはユキの膝枕で目を覚ました。


「嬉しいな、ボクの名前、覚えててくれたんだ」


「あぁ、何で、俺の名前」


「あぁ、それはね、ここの係の人に聞いたんだ。いきなりでごめんね」


「…そうか」


「こんにちはアスタさん、大丈夫ですか?」


「!?、ミユキさん」


「あれ、私の名前ご存知だったんですね。お姉ちゃんが教えたの?」


「いや、ボクは話してないけど…あ、それよりアスタ、何があったの」


「!?そうだ、ヒナが、早く、行かないと、イテテ」


起き上がるアスタだが、敵から受けた痛みがまだ残っていた。


「アスタ、大丈夫?」


「あぁ、俺は、大丈夫、そんな、ことより、早く、行かないと」


フラフラな状態で部屋から出ようとするアスタ、そんなアスタを見て、ユキはアスタを止めた。


「待って、そんな状態で、どこに行くつもりなの」


「どんな状態でも、行かなきゃいけないんだ。俺には、その責任があるから」


部屋から出ようとするアスタ。そんなアスタを見て、ユキは手を握って止めるのではなく、アスタに抱きつき、アスタを止めた。


「え?」


「君は変わらないね。多分君は、今から戦いに行くんだよね。でも、勝てるかどうか分からないのに、一人で挑もうとして。そして、全部一人で背負ってしまう。初めて君に会った時、君はあのモンスターに挑もうとしてたでしょ?そして今回は、ヒナさんって言う人がピンチになって、それを一人で背負おうとしてる。確かにそれは、君の強さかもしれない。でも、それはホントに、君一人だけが背負わなきゃいけないものなの、ボクはそうは思わない。ボクも、ボクも手伝う、君がとても大きな重荷を背負っていることは、なんとなく分かる。だから、ボクにも手伝わせて、君が持ってる重荷を、ボクにも持たせて」


「何で、そこまでしてくれるんだ?」


「それは…君が心配だからだよ。…うん、ボクは君に協力したいんだ。だからお願い、ボクにも手伝わせて」


「いや、でも…」


アスタは今まで、亡くなった仲間や親友から受け継いだものを、全て一人で背負っていた。ヒナから協力するとは言われていたが、自分が背負ったものを、人に、誰かにも背負わせてしまうことに、不安を感じていた。なぜなら、自分が背負っているものを、誰かに渡すことで、その人が傷ついたり、不幸になるのを避けたかったからだ。


だがユキは、そんなアスタに、優しく言葉をかけた。


「誰かに頼ることは、そんなにカッコ悪いことじゃないよ。誰かが困っていたら助け合う、ボクはそんなところが、人間の魅力だと思うんだ。だからアスタ、ボクに、君の手伝いをさせて」


アスタはユキのその言葉に、思わず涙を流した。


「ホントに、良いのかな。誰かに頼っても、俺は、良いのかな」


「うん、良いんだよ。初めて君に会った時も、言ったでしょ?困ったら頼ってって」


アスタは涙をこらえながら、ユキに協力をお願いした。


「ヒナを、ヒナを助けるのを、手伝ってくれますか」


「うん、もちろん」


ユキは笑顔で答えた。そんなユキを見て、アスタは涙を流しながら、ユキに感謝を伝えた。


「ありがとう、ユキさん」


「さんなんていいよ。敬語はなしにしよう。ボクのことはユキって呼んで」


「あぁ、分かった」


「アスタさん」


「ミユキさん」


「私も敬語なんていいですよ。私も協力します。いえ、協力させてください。一緒に、ヒナさんを助けに行きましょう」


「ありがとう、二人共」


「いいって、さあ、助けに行こう、この三人で!」


「あぁ、ヒナを助けに」


ヒナを助ける、その目的を誓いあった三人、アスタ、ユキ、ミユキ、この三人は、ヒナを助けるべく、作戦を考える。


「それで作戦だが、何か案はないか」


「そうだね…ヒナさんがどこにいるかは分かる?」


「!あぁ、場所なら分かる」


アスタはヒナとフレンド登録をしていた為、ヒナの場所を知ることができた。


「ヒナは、ここだ」


そう言ってアスタが示した場所は、第十五階層だった。


「第十五階層か」


「十五階層、お姉ちゃん、そんな所になにかあったけ?」


「第十五階層から第十九階層には、確か洞窟があった気がする。ダンジョンではモンスターがいるから、恐らくヒナさんは洞窟にいると思う」


「洞窟…」


「どうしたの、アスタ」


「いや、何でもない。それより、洞窟の中のどこにヒナがいるのか」


「…ボクに少し考えがある」


「!?あるのか」


「うん、でもとりあえず第十五階層に行こう、考えはその時に話すよ」


ユキがそう言うと、ひとまず二人は納得し、第十五階層へと向かうのだった。


「(待ってろよ、ヒナ)」

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