41:征服? いいえ(今は)観光です
「到着だ。さっさと行くぞ」
そして門番へ近づいていく。
「身分証を提示してもらおうか」
「これでいいかな」
……すると、やはり彼も目を見開いて血相を変えた。
「こ、これはネビュトス皇帝陛下っ! どうぞお通りくださいませ!」
「お勤めご苦労さま」
「ありがたきお言葉!」
知ってた。
俺たちは半ば呆れ顔で門を通過し、大きな建物を探す。そこでもまた門番とのやり取りがあり、似たような伝言を聞き、次の街へと移動する。
ときにはその街の特産物を食べたり、買い食いとかをして旅行気分で繰り返していった。
ちなみにアリアはよく食べていた。食事の必要はないなんて言ってた癖に一番食べている。しかも揚げ物とか濃いものばっかり。モミジはあっさりめのものを食べていた。あ、俺はどっちも。
そしていよいよ街を訪れるのも三十回目に到達し、ついにコンプリートすることが出来た。もちろん全部しっかりとハクティノの手が伸びていたさ。
それに王都に近ければ近いほど「大公閣下」と呼ばれ、離れていれば「ハクティノ閣下」だった。そういう使い分けなんて絶対あいつができる訳がないのでこれもキルボネの仕業だろう。
「ネビュトス殿、もう回り終わったと思うでござるが、次はどこへ行くでござるか?」
「そうです! あと残ってるのなんて――」
「王都、だろ? 次はの目的地は王都さ。それがヒシズ王国の最後の場所さ」
「ついに、でござるか!」
「私行ったことないんですよね……評判悪いですから」
新たな冒険に心躍らせるモミジとは対象的に、嫌そうな顔をするアリア。だが、確かにその気持ちも分かる。恐らく王都はまだ支配下にないわけだし、ゲーテの二の舞になるとしか思えないからな。
「まぁ、もう気にせず行くぞ。文句を言ってもどうしようもないんだからな」
「そうですね……覚悟を決めます」
「ならば拙者も腹をくくろうぞ。どんな試練が待ち構えていようと、突破して見せるでござるよ」
「素晴らしい。では、
◇
「さすが王都、桁違いの大きさだな」
「今までこんな大きい城壁なかったですよね……」
幾度か
そびえ立つ城壁の遠くには、城の尖塔が顔を出している。それに城壁の回りには大きな堀もあり、跳ね橋が一つ架かっているのみだった。防衛設備もきちんとしているのだと感心する。
「止まれ。身分証を提示せよ」
「これでよろしいでしょうか?」
「……ちっ、ゴミ以下で役にも立たないDランクか。まぁいい。通れ」
「どうも~」
舌打ちはされるわ睨まれるわで大惨事だな。さすがの評判の悪さ。他の街でもこれよりはひどくなかったよ。
「しっかし大きいな。他の街の領主館と同じ大きさの建物がそこらじゅうにあるだなんてさ」
「金がどれだけかかってるのでござろうか……」
「ね、ねぇモミジさん。なんかさっきから視線を感じませんか?」
感嘆する俺ら二人。しかしアリアは違うことに意識が向いていたようだ。人通りが多いのもあって余計にそう感じるだけだと俺は思ったのだが。
「確かにそうでござるな。特に……胸でござる」
「うぅ、気持ち悪いですぅ……」
二人の表情は本気で嫌がっている人のそれだ。通りかかる男は間違いなく見ているし、女はただ「田舎者」と伝えてくるかのような目つきをしている。疎外感ったらありゃしない。
「俺は全然分からないな。なんとなく視線があるのは分かるけど……もはや侮蔑の視線に思えてきた。男だからってそりゃないぜ?」
「おっと、ぶつかってしまった。すまないね」
「……今の人、どさくさに紛れてお尻触ってきたんですけど」
「さすがの評判の悪さだ。アリア、モミジ。もうここ滅ぼすことにしていいかな? 示威行為にもなるしさ」
「私は賛成です!」
「拙者は……何も言わないことにしておくでござるよ」
クソ女神の言う「腐った世界」とはこれを指すのだろうな。ヒシズ王国でまともだったのはゲーテで俺たちを歓迎してくれた人たちくらいで、他はお偉いさん向けの営業みたいなもんだった。
「じゃあ、この国滅ぼすの決定だな」
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