2:クソ女神からの贈り物

 何も見えない、何も感じない――ここはどこだ?

 まるで水の中にいるような感覚だ。暗く冷ややかな深海のような。

 

 すると突如、何かに押し上げられる感覚を覚えた。

 だんだん水面に近づくのがわかる。

 そこで希望に満ちた光を見たような気がした。


 そして目が覚める――――


「あぁ……」


 幾度か瞬きをし、手を開いて閉じてを繰り返す。

 無事転生出来たようだ。

 ――なぜだか状態で。


 「この身体は……何か懐かしい感じがする」


 そう呟いた途端、自分の身体が炎に包まれた。腕を上げたり、足を広げてみたりと身体を見てみたが、隙間なく燃えていることが分かっただけであった。

 だがしかし、燃え盛っているはずなのにちっとも熱くない。


 少し待てば炎は消え去った。何事もなかった事に安堵しつつ自分の身体を見下ろしてみると――


「骨だけ……!?」


 先程まであったは全て消え失せ、”不死者アンデッド”というのを実感させられる身体へと変化してしまったようだ。


 肋骨の辺りから股間の骨が見えるなんて、とんだ不思議な光景だ。


「なんだったんだ今のは……まぁいいか。骸骨になるって言われてたんだし」


 気を取り直し、周りを見渡してみる。

 今、俺がいるこの場所は黒を基調とした豪華な部屋――貴族の屋敷を彷彿とさせる程のものだ。


 後ろには対になったソファと机、その更に後ろには黒大理石か何かで出来た大きな机がある。羽ペンやら羊皮紙やらがあることから、ここが執務室だとわかる。

 左右には大きな本棚がある。視力――目は無いはずだけど――はとても良いのでタイトルが読めるのだが、どうやら歴史書や様々な魔物の本などがあるようだ。後で読むことにしよう。


 そして目の前には大きな窓があり、そこから景色が見えた。遠くには果てしなく続く海が一望できる。


 まさに絶景スポット、写真を撮りたいくらいだ。


 もっと近くで見るため、慣れない身体を動かすのに四苦八苦しながら歩いて窓に近寄る。


「おぉ……! スタート地点がこんな豪華な場所だとはな!」


 窓から下を見ればそこには大きな城が見えた。上には尖塔しか見えないことから、どうやら俺の現在地は巨城の最上階のようだ。

 そしてその周りには城を囲むように森が広がっている。もはや樹海と言えるくらいの広さだろう。樹海見たこと無いけど。


 さーて、世界征服のために何があるか確認しないとな――


「――ってそうじゃん! 二週間で征服しないと俺まずいことにぃ……!!!」


 その事を唐突に思い出し、今までの感動が全てどこかへ吹っ飛んだ。


 あの女神、いやクソ女神め……最後に爆弾落としやがったな? 二度と信用したりするかよ……!


「こうしちゃいられない。能力ステータスの確認と服を着るのと作戦を練るの……思いつくのはこのくらいか。全て今日中にしないと」


 幸いまだ日が昇ってすぐ――午前6時くらいか。時計もⅥを示しているので間違いないだろう。今からやればきっと間に合うはずだ。


「さて、始めるか……能力ステータス


 この世界にはステータスなるものがあるらしい。

 といっても見れる情報は少ない。


 ・名前:___NoName

 ・種族:不死者の皇帝イモータル

 ・体力:∞(世界レベル5)

 ・魔力:∞(世界レベル5)

 ・種族固有スキル:【不死者】支配・創造ヴァルソグニル


 これだけだ。


 吾輩は骨である。名前はまだない。

 自分でつけるのもいいが、そんな事を考えている時間はない。

 別に支障はないしな。


 種族は聞いた通りで、体力と魔力はなぜだか∞になっている。

 世界レベルというのはよくわからないが気にしていない。

 スキルは不死者アンデットを自由に操れるってスキル。


 しかしこのスキル、知っている不死者アンデットしか召喚は出来ないらしい。だから現代にも伝わる骸骨スケルトンくらいは召喚することが出来るだろうが……早急に不死者アンデットについて調べなければ。


 とまぁ、これらの情報はクソ女神に教えられたものだ。

 ……あいつに感謝するのはこれっきりだな。


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