第2話

憂鬱。

 溜息が出る。



 ゆっくりと、気だるげに。



 ローリエは……。

 

 いや。

 

 すめらぎ愛海なるみは、その辺の倒木に腰を下ろし。



 思う。


 『結局、どこで何をしても、私は同じなんだな』、と。

 何一つ変わらないんだ、と。

 

 愛海が、このゲームを始めたのには理由がある。



 

 

 愛海は、コミニケーションが得意ではない。

 むしろ、コミニケーションなんてしない。

 必要な生活を送ってきていない。


 学校ではいつも一人だし、誰からも声をかけられない。


 

 中学校の三年間、一緒のクラスだった人に、「誰だっけ?」と言われるほど、影が薄い。

 珍しい苗字のヒトでしょ。という程度にしか人の中に残らない。

 

 そんな学校生活が楽しい筈もなく。

 家族にも、あまりに生き方が不器用すぎて心配をかけていたから。

 

 だから、VRMMOを始めたい。

 そう言った愛海に。

 そこそこ値の張る機械を、母が快く買ってくれた。



 



 愛海は期待していた。


 ゲームの中でなら、友達がたくさん出来るかもしれないと。




 ―――。



 しかし、現実も仮想も、何も変わりはしない。

 だって仮想空間はもう一つの現実だ。


 生き方が変わったりするわけじゃない。

 性格が変わったりするわけじゃない。



  



 結局、愛海――ローリエは、ずっと一人で遊んでいた。

 誰かと遊んでみたい。

 そんな気持ちはずっとあるのに。



 どうやればいいのか、解らないまま。

 はや、3年。

 とうとう、ローリエはゲームの限界一歩手前くらいまで、強くなった。

 他のゲームで言うなら、最大がLv100だとするなら、Lv99くらいにはなったということだ。

 

 たった一人のまま。



 これなら、ネットで繋がるゲームである必要が無い。


 何をしているのだろう、母に、高価なゲームを買ってもらって。


 もう、高校生になって、1か月になるというのに。

 何の進歩もない自分。


 嫌になる。


 そんな自己嫌悪を引きずって。


 ローリエは、街へ向かう。

 魔物から削り取った金目の物を売りに行くために。

 

 ああ、そうだ。


「ついでに、倉庫に溜まってる万能霊草パナケアもエリクシルにしなきゃ」

 

 美形に作られたエルフの少女。

 その顔に浮かぶ表情は、今日も暗い。


 

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