光 140

 鴉を真ん中にして天ちゃんと僕。



 僕の横にいっちゃん、かーくん、きーちゃん。






 まだまだ明るい午前中なのに、今から本格的に今日が始まるのに、おっやすみーって元気すぎる天ちゃんの、本来なら夜の挨拶。






 変な気分だなぁって思いつつ、寝れるのかなって思いつつ、おやすみなさいって僕も言った。



 ひとつ目ちゃんも、かーくんも、きーちゃんも。



 天ちゃんの声は外にまで聞こえたらしく、まーちゃんのにゃあって声も聞こえた。






「うんうん、おやすみ〜」






 そして部屋は静かになった。






 僕はすぐには眠れなかった。



 少しの間ごろごろしてた。






 気を抜くと思考がマイナスに行きそうな気がして、天井の木目に変な形がないか探したり、いっちゃんの小さい手をかわいいなあって見たり、きーちゃんのぷにぷにの肉球を触らせてもらったり、鴉の肩から首あたりをカッコいいなあ、男っぽいなあって観察したりしてた。






 こんなことしてたらみんなが起きるまで寝られないんじゃない?って気づいて、僕はそこでやっと目を閉じた。






 目を閉じて視界が黒になるのが少しこわかった。






 黒いところから、自分の意思とは関係なく、勝手に思うことが出てくる気がして。



 勝手に。今までのことが。






 勝手に、だよ。



 だって僕は思い出したくない。全部忘れたい。



 そう思ってるはずなのに、目を閉じた黒い世界は僕を引き摺り込む。黒い方へ。






 同じ黒なら鴉がいい。






 僕は鴉の方に身体を向けて、布団の中で鴉の黒い服をちょっとだけつまんだ。






 さっきの鴉状態。






 でも。






 何でか自分の口元に、笑みが浮かんでる気がした。






 鴉の服をつまんだのがよかったのか。



 その後少しで僕は眠りに落ちた。






 落ちてく中で、落ちてく感覚があった。



 僕どんどん寝てってるって。






 落ちていきながら、天ちゃんと鴉と僕、いっちゃん、かーくん、きーちゃん、まーちゃん含めた楽しい記憶が浮かんでは沈んだ。






 毎日毎日。



 あんなことがあったのに、色んなことがあったのに、何故か僕は笑ってる。笑えてる。



 色んなこと。






 ありすぎだよね。僕まだ高1だよ?高1でこれなら、これから大人になってくのにどれだけなの?






 眠りに落ちて、眠りに落ちて。僕は文句を垂れながら眠りに落ちてく。






 落ち切ったところで、楽しい夢は途切れた。



 途切れて、瞬間で世界は真っ黒になって、そして。






 真っ黒な世界にひとつ。






 いつものように母さんの口がひとつ、浮かび上がった。

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