光 94

 天ちゃんのハイテンションがよく分かんなくて、鴉はどうなんだろうって鴉を見上げてみた。



 鴉が僕の視線に気づいて僕を見たから、首を傾げてみた。



 天ちゃんのアレは何だろう的に。



 そしたら鴉も首を傾げたから、鴉にもよく分かんないのかあってちょっと安心した。






 で、ふたりでまた謎の天ちゃんを見る。






「え?オレのこの嬉しさが分かんない?うっそーん。これは経験で成長だよ‼経験‼︎︎成長‼︎鴉の‼︎その瞬間を見たんだよオレたちは‼︎」






 経験。



 成長。






 そういえば天ちゃんは言ってた。






『人と関わって、関わり合って、人は成長する』って。






 そうか。



 ずっと天ちゃんとふたりだった鴉に『やきもち』を焼く経験は。






 ………ない、よね。だってふたりだもん。天ちゃんと鴉のふたりきり。






 やきもちって感情は奇数になって初めてできるものだと思う。



 僕はひとりっ子だからきょうだいで母さんの取り合いみたいな経験はなかったけど、友だち関係でそうだった。



 ふたりで遊んでたところにもう一人が加わって、そこで初めてもやってした。






 やきもちは、人と関わらなければ、僕が居なければ、来なければ、鴉には分からなかった感情。



 これがやきもちっていう経験。感じて、成長。






 天ちゃんはそれを喜んでる。






「ぴかるんありがとう〜‼︎天ちゃんは鴉の親として嬉しいっ‼︎」

「うわっ」






 そっかーって思ってたら、天ちゃんががばって急に抱きついてきて、びっくりした。



 喜び方がお母さんだよね。



 子どもの成長を手放しで喜んでるって。






 そんな風に、そこまで想われてる鴉が僕にはやっぱり羨ましかった。






 ちょっと天ちゃん離してよって思いつつ、そんなことも思ってたら、鴉がべりって。



 剥がすみたいに僕と天ちゃんを離した。






 心なしか顔がいつもよりこわい気がする。






 やきもち、か。






 っていうかさ。



 鴉はどっちにどうやきもちなの?って疑問。



 今までずっと独占してた天ちゃんを僕に取られた、の方が、やきもち的に普通だよね?



 光、俺のお母さんをよくもって。天ちゃんはお母さんじゃないけどさ。



 天ちゃんに僕を取られた、じゃ、なくて、その普通だよね?が、何か違うっぽく見えるのは、鴉が不機嫌に天ちゃんを見てるから。






 え?まさか?天ちゃんに僕を取られてやきもち?



 かーくんがよく鴉を突いてるように?






「ほらー‼︎やきもち‼︎鴉がやきもち‼︎やきもち焼いてる超かわいいーーーーー‼︎」

「ちょっ…ちょっと天ちゃんっ」

「………」






 どっちがどうなのかはっきりしないのに、さらにテンションが上がった天ちゃんが、また僕を。



 今度は鴉も一緒にむっぎゅーってした。






 ちょっと天ちゃん‼︎嬉しいのは分かるけど、力加減もうちょっと加減して‼︎






 天ちゃんの馬鹿力にぐえってなりつつ、僕は僕で、鴉が。






 羨ましかった。

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