光 11
多分意識が飛んでた。
それがどれぐらいの間だったのか分からないけど、ふわって何か上がった体感と一緒に目を開けて、見えたのが空で頭が痛くて、あっ、て。
あまりにも痛くて、こわくて動けなかった。
なるべく頭を動かさないようにそっと手を動かして、頭の痛いところ周辺に触ってみた。
「………っ」
そうかなとは思ったけど。
ぬるってした。
その手をまたそっと動かして見たら。
血。
だよねって、思った。
びっくりしてひっくり返ったのは石の上。
とげとげした大きい石を囲むように、やっぱりとげとげした石があった。地面に埋まるように。
そのひとつに足を取られて、ひっくり返った先にあった石に後頭部強打。
何なら今、石の上にひっくり返ってる背中も痛い。
頭。痛くてどくどくしてる。
僕、このまま死んじゃう?このままこうしてれば死ねる?
痛くて動けないし、血が止まらないならさ。
そう思った。
あれ、何だったんだろう。
びっくりしたやつ。
思わず叫んだやつ。
小さい女の子だった。白い着物を着た。
でも、普通の女の子じゃなかった。
少し前に流行ってた妖怪のアニメに居た一つ目小僧の女の子バージョン。
他は普通なのに目だけが中央にひとつで、びっくりし過ぎて足元の石に見事足が引っかかってひっくり返った。
確かに見たと思うけど、普通に考えたらそんなのが存在するはずない。そうでしょ?
だからきっと幻覚的なもの。
そんなの見てびっくりしてひっくり返ってコレって何僕。ばかみたい。
仰向けになってるから、青い空に太陽が眩しかった。
このまま死んじゃうんだね。こんなところでね。ひとりでね。
途中までは普通の毎日だったはずなのに、何でこんなこんな風になっちゃったんだろう。
どくんどくんどくん………
ぶつけた後頭部が心臓と連動してるみたいになって痛い。
まだ血って出てるのかな。
あとどれくらいこうしてたら死ねるのかな。
死のうとしてたからなのか、こわいと思うことはなかった。
「………いた、い?」
「………っ⁉︎」
空が眩しくて見てられなくて、目を閉じたら声が聞こえてびっくりして目を開けた。
そしたらそこに。
そこに。
叫びそうになるのを何とか堪えたのは、堪えようと咄嗟に思ったのは。
目。
ふたつなきゃいけないはずの目が、ふたつじゃなくて真ん中に大きくひとつしかないその目が、涙で潤んでたから。
ふわん。
あったかい何かを感じたから。
「ごめん、なさい」
小さな女の子。
小さな小さなひとつ目のその女の子が、小さく小さく言う。
ごめんなさい。
この子、絶対いい子だ。
「ごめんね。僕が勝手に転んだんだよ」
だから気にしないで。
気にしなくていいんだ。全然。
だって僕は。
僕は。
ふわん。ふわん。ふわん。
痛いのが消えていってる気がする。
あったかくて気持ちいいものに包まれてる気がする。
ごめんね。泣かないで。
言いたいのに声が何でか出なくなって、やっぱりこのまま死んじゃうかなって。
ごめんねって思いながら、僕は血がついてない方の手で、その子の小さな小さな頭をそっと撫でた。
そしてそこで。
急に。一気に。
力尽きた。
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