光 3
何で。
もういいやって。
母さんが死んじゃって、父さんが帰って来なくなって、入ったばかりの高校で何人もの先輩に無理矢理おかされて、先生も分かってて黙認で黙殺。
もう。いいやって。天狗山に入った。
そう、だよね?
そうなのに。そのはずなのに。
天狗山は外から見るより険しかった。
人が入らない、人の手が入っていない山だからそうなんだと思うけど険しくて、すぐに僕は息が切れて疲れて、動けなくなった。
それでも、あんまり下の方だと誰かにみつかるかもしれないと思って、上を目指した。
どうやって死ぬんだろう。
動けなくなるまで歩いても、すぐにすぐは多分死ねない。
本当に死ぬまでには時間がかかる。
餓死、とか?
餓死できるまでには何日かかるんだろう。ちょっとツライかもしれない。
ああでも、こんな山なら動物が居るかも。野生の何か。
そういうのが食べてくれないかな。痛いかな。
ダメなら蔦みたいなので首を吊ってもいいかもしれない。
歩きながら僕は、死ぬことばかりを考えてた。
そして歩いて歩いて歩いて歩いて。
もう、歩けないって。
足がもつれて転んで、そのまま動けなくなった。
ずっと歩いてたから暑くて、山に吹く風が気持ち良くて目を閉じた。
このまま死ねるかな。死ねるかも。
あちこちが痛かった。
何でこんなことになってるんだろうって思った。
そしてそのまま僕は意識を手放して………。
「飯は?」
黒づくめの鴉………さんが、ぼそっと僕に聞いてきて、僕は要らないって返事をした。
布団で横になったまま。
鴉さんの方を見ないまま。
すぐ横に、カラスの重みを感じる。ぬくもりと。
こんなに間近でカラスを見たことがないから正直こわい。
それに、何されるか分からないって、僕は布団に潜ってた。
なのに同時に、何でか僕にくっついてるカラスに、ぬくもりに、ちょっと安心みたいなのも、感じてた。
飯は?って聞きにきて、居なくなって、また来た鴉さんが、水置いとくって、かたんって音をさせた。カシャン、も。
何で。
何で僕はここに居るんだろう。何で放っといてくれなかったんだろう。
僕なんかどこの誰かも分からないのに、何の得にもならないのに、何で。
何で。
涙が何でか、溢れてた。
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