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直央とリナ、菊田と陽子、そして歩と進の六人は美しい草原にシートを広げて座っていた。
リナと陽子がそれぞれお弁当を作り持ち寄って歩と進のもとへ押し掛けたのだった。
「ああ~、やっぱりここは気持ちいいね~」
リナは全身で太陽を浴びるように体を伸ばしていた。
「さあ、お昼にしようぜ。歩も進も腹へってるだろう? 今日はリナ特製のサンドイッチだぞ」
そう言って楽しそうにサンドイッチを見せる直央。
そんな直央をあきれたような顔で歩と進は見つめていた。
「あのさ、こんなしょっちゅう来られても、僕たちやることがたくさんあるんだよね」
「まあ、そう言わずに。息抜きだって必要だぞ。ほらっ」
直央は持っていたサンドイッチの入った紙袋を歩に投げた。
「わっ。もう……」
そう言いながらも歩と進はその紙袋を開けてサンドイッチを取り出し食べはじめていた。
「うまいだろ?」
「うん。美味しい」
「美味しいよ」
二人が食べている姿に直央たち四人は嬉しくなって笑顔になっていた。
このAIタウンに来て三ヶ月。
みんなそれぞれ楽しみながらのんびりと過ごしていた。
「ねえ、もし子どもが出来たらどこで産むのかしら。ここ?」
陽子が歩と進に聞いていた。
「ああ、ここでもいいし、妊婦さん用の街を作ってもいいな。安心して産めるようにね」
「え、まだ考えてなかったのかい? 子どもを作ってほしいって言ってたのに」
菊田が心配そうに言った。
「今でも妊婦さん用の街はあるけどね。これからどんどん増えるでしょ? だからちょっと考えなきゃなって思ってる」
「AIタウンの人たちがこれから妊娠してみんなそっちに移ったら大変なことになってしまう。ここには人がいなくなってしまって妊婦さんの街がいっぱいになる」
「だから何か考えないとね。陽子さんのお腹が大きくなる前に」
「えっ?」
「は? 陽子さん、妊娠してるんですか?」
リナと直央は目をまるくして驚いていた。
「え、あ、うん。そうなのよ。たぶんだけどね。昨日検査薬で調べてみて」
「マジか! おめでとうございます」
「おめでとうございます」
「ありがとう。バレバレよね。菊田さんの動揺ぶりで」
「え、僕?」
「確かに菊田さん必死でしたね」
「そんな、恥ずかしいな……」
「はは」
「ふふ」
「まだ考えてないなら、できればここで産みたいな」
陽子がぽつりと言った。
「妊婦さんの街は女性だけなんでしょ? できることなら菊田さんと離れたくないし」
「僕もだよ。陽子さんをサポートしたい。僕の子でもあるんだからね」
菊田と陽子は見つめ合っていた。
「じゃあ産科病棟を作って、妊婦さん用と赤ちゃん用のお店も作らないといけないな」
「あの病院の隣でいいか。それだと何かあった時にも安心だし」
「そうだね。お産婆ロボットも作らなくちゃ」
「ほら、やっぱり僕たちは忙しいんだよ」
歩と進は恨むような顔で四人を見た。
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